秘密の時間
目の前には好きな人。
優しく私を見つめ、いつだって暖かく見守ってくれる、いわば理想の上司。
でも、その人は妻帯者でだから気持ちすら伝えられなくて…。
伝える。
伝えるって難しい事だけど、伝えられないって、もっと難しい事なんだ。
気持ちを隠さなければいけない。
せめて相手には気付かれてはいけない。
でも、だだ漏れの私の気持ち。もしかしたら部長は気付いているのだろうか?
「美優、こっち向いて…」
その声に、その言葉に簡単に頼りたくなる。
優しくて暖かくて、誰にでもきっとおんなじ態度で、だから私だけが特別なんてないのに…。
「美優、聞いて…」
切ないぐらい苦しい胸の痛みに、もう耐えられそうもない。
ただ、ただ私は部長が好きで、でも、それ以上は望んではいけないんだ。
「この指輪はフェイクだよ」