秘密の時間
ゆっくり目を開けると不安げに揺れる瞳が見えた。
初めてみるそんな部長の表情に、益々鼓動は波打つ。
「さーて、帰るか。ほら美優行くよ」
しっかりと握り締める手。
その手の温かさに部長の優しさが思い知らされる。
暫くそのまま歩き続けて、会社の近くまで来た時急に手は離された。
「気を付けて、帰るんだぞ」
「…はい」
今日はもうこれでさよなら。
離れたくないと思っても、仕事を掘り出してまで来てくれた部長にこれ以上迷惑かけられない。
「じゃあ、明日な」
部長が足早に社の中へ消えて行く。
それを見送ってから、私は駅に向かった。