秘密の時間
次の日も仕事な訳で、
昨日の約束は守られないまま、気まずい一日が始まる。
と、言っても今日は金曜日なので今日の仕事が終われば明日はお休み。
特に予定は無いけど、部長と顔を合わせないで済むと思うと悲しい反面、ほっとする気持ちもあった。
今日もきっと部長とはあまり関わらないだろ。
部長の表情は険しく、少々顔色も悪い様な気もしたが、落ち込んだ気持ちは部長の気持ちまでは考えられない。
ちょうど後少しでお昼と言うとき、「中村」といつもより低い声色の部長に呼ばれた。
「はい」なんておずおずと返事をし部長の席の前に立つと、「悪い、急ぎなんだその資料。ちょっと頼まれてくれないかな?」なんて気弱な声で言われてしまった。
「はい、分かりました。
あの…、体調悪いんですか? 額に脂汗が…」
じわりと滲む今どきあり得ない汗。
心配になって声を掛けるも「…大丈夫」なんて言われてしまえば、それ以上は何も言えない。
「じゃあ急いで仕上げます」
そんな言葉だけ残し、私は自席へ戻った。