秘密の時間


「食べないと美優が今度はばてるぞ」



俯いてる私に、私にしか聞こえないボリュームで会話する部長。


その台詞に顔を上げると、少し困った表情をした部長と目が合った。



「昨日の事は本当に悪かった」

「……」



そう言われても、思い出しただけで涙は落ちそうになるし、悲しい気持ちに胸が覆われる。



部長の前だ。泣いてはいけない!



そう思うのに言う事を聞いてくれない私の涙腺。



ぽとりと一粒の雫がテーブルの上に落ちる。



目の前で定食を食べている部長の手が止まるのが分かった。



「本当にごめん。悪かった。遅くなってもメールぐらいするべきだったな」



大きい温かな手が私の頭を撫でる。



それが合図だったかのように隻を切って涙が溢れだした。




「大橋部長、泣かしちゃったのかい?」



食堂のおばちゃんがテーブルを拭きながらそう聞いてくる。



「うん、泣かすつもりはなかったんだけど…、少し強く叱り過ぎたかな?」


「大橋部長そんな事あるんだね。今の子をこんな風に泣かしたら、明日から仕事来ないかも知れないよ!」


「もう、杉さん脅かさないでよ。年末でもの凄く忙しいのに、人一人減ったら益々家に帰れなくなるよ」



えっ!
そんなに今忙しいの?

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