秘密の時間
ふと涙を流しながら顔を上げると、部長が優しく微笑んでいる。
「まぁ、中村さんなら大丈夫だと思うけどね」
そう部長が食堂のおばちゃんに話を振ると、おばちゃんは「本当に、どこからそんな自信が湧いてくるんだか…」なんて呆れている。
「ほら、中村さん。大橋部長なんかに負けないで、頑張り! 大橋部長にもあげようと思ったけど、こんなかわいい子泣かした罰、中村さんだけにこれ、あげるね」
私の目の前に一粒のチョコレートが置かれる。
その手先を辿るとおばちゃんがいて、目が合うとにっこり微笑みをくれる。
「大橋部長こう見えて、かなりの甘党なんだよ。今度なんか合った時は目の前で美味しそうな甘いものたべてみな」
こっそりそう耳打ちしておばちゃんは背を向けた。
「杉さん、俺には?俺にはないのチョコ!」
「あげないよ。こんな可愛い部下泣かす上司には」
杉さん…。なんて悲しそうな声で呟く部長がなんとなく可愛かった。
そんな部長をみてたら涙はいつの間にか止み、笑顔が零れていた。
「やっと笑ったな」
にっこり笑う部長は再び定食に箸をつける。
「さぁ、食べたら仕事に戻るぞ!」
そう宣言し、早速食べ始めた。