X人のご主人と愉快な式神たちの話
雅晴はちょいとがっちりとした体形で、悪く言えばぽっちゃりとしている。
それなのに、胸はこれでもかというほど平べったい。
目も小さく口は大きい。
黒髪を後ろで常に束ねている。
容姿が最悪なだけならまだいい。
しかしこの雅晴法師ときたら、
(ったくよお、美人でスタイル抜群の陰陽師じゃなくて、悪かったなっ。
けっ、胸があったって、邪魔で戦いにくいだけだろうが。
可愛いだけで妖かしを倒せるかよ)
と、御覧の通り、妬みも深く性格も悪く、言ってしまえば口も悪い。
いいとこなしとは、このことを言う。
こんな性格だからか、たまに悪事を働く妖かしと気が合うと思ってしまう。
「おうい、グランドパンツァー。仕事だぜえ」
法師の衣を身に纏った雅晴が、草履を履きながら玄関の――何も描かれていない掛け軸に呼びかけた。
数える間もなく―
ぬう、と美しい、近代の兵士の如くの迷彩の兵服を着た年若い人間が、掛け軸から飛び出した。
その容姿からは男か女か判別しにくい。
それが率いているのは、無数の機銃を構えた装甲車である。
それらは壁やら塀やらをすり抜けて、凄まじい速さで雅晴について行った。
「主様、こたびの依頼は?」
兵士は女の声で言うのだった。
「都市部から離れた古寺さ。
なあに、こっから遠くはない、さっさと片付けちまおうぜえ」
「あいさあ」
素っ気ない返事である。
その肉のついた体型に似合わず、雅晴は兵士の乗っかるグランドパンツァーと共に、
目的地へと駆けてゆくのであった。