X人のご主人と愉快な式神たちの話
「もめえんがおんおうあお」
おめえが怨霊かよ、と言いはしたが言葉になっていないのは確実である。
―グランドパンツァー!
主の命を受け、兵士は新しく水槽の中に餌を入れてもらった魚のように、
その眼光をより一層煌めかせた。
―上ぞ!
兵士が心の内で命ずるや、グランドパンツァーはいくつもの妙なる形の機銃を丈の木に向けた。
―放てい!
この兵士、どうやらグランドパンツァーに言葉にせずとも心で命じられる力があるらしい。
兵士の思うとおりにグランドパンツァーは動く、はずだ。
ずががが、と突如として頭上に現れた巨木に向かって銃を放った。
これであの女の意のままに動く髪の毛を止められる―――というのはあくまで「つもり」であって、
実際そう完璧にいかぬのである。
機銃の弾丸が、ずどんずどんと自らに降り注いだ。
「おやっ」
「なにやってんだよおおお!」
渾身の力で髪を引っぺがした雅晴が大いに悲鳴にも似た叫びを上げて弾丸から逃れる。
「おいいい!お前ってパンツァーと以心伝心なんじゃなかったのかよコラァ!」
「おかしいですね、やるときは『まあできるんじゃないかな』みたいな予感がしたのですが。
できたことはないけど、今度こそはできるという……」
「それただの自信過剰だから!もうちっと例に習って行動しましょおおお!」
ひいい、と自らが掘った墓穴にはまっている雅晴たちだったが、
それだけで終わっていては法師陰陽師の稼業は務まらぬ。
降り注ぐ弾丸の範囲から外れ、雅晴はさっと身構えた。