X人のご主人と愉快な式神たちの話
《にしても、見ましたかい。
昨日のあの外法師のやられっぷり、非力とはあの事にございますねえ。くけけけっ》
「はっ。
そりゃそうだろ、あんなパワーファイタ―に幽霊相手は無理だ」
昨日の戦い、男に捨てられて命を投げ捨てた女の亡霊を、鬼門が見事にねじ伏せた一戦である。
―――……あたしゃあ、人間には優しくなくても、妖には優しくしてるつもりなのさ。
そう、じつは件の一戦を、この唯斗は目の当たりにしていたのだ。
負けかかっているところを助けて手柄を横取りしてやるつもりだったが、どうしてか、
あの外法師の言葉を聞いて、体が硬直していた。
優しくしている……つもり、とあの外法師は言った。
その一言には自虐的と言うか、己のことを多少卑下しているという風情があった。
そんな飾り気のない言葉が、唯斗を惨めにさせた。
(ちっ)
心のうちで舌を打ち、さっさと唯斗は学校内の通路を徘徊しているのだった。
《む、唯斗の旦那。
なにやら臭いますぜ》
怨龍がかたりと骨を鳴らす。
ふむ、と唯斗はそこで立ち止まり、耳を澄ますのと似た感覚で感覚を研ぎ澄ましてみる。
しんみりと、肌に冷たい感覚が走ったのが分かる。
ちょうど、カッターシャツ越しに冬の寒気がしみ込んでくるようである。