X人のご主人と愉快な式神たちの話
「本当だ、どっかにいやがるな」
《あっしが探し当てましょうかぃ?》
「ああ、そうしてくれ」
探し出す、と怨龍は言ったが正しくは、あぶり出す、ということになる。
怨龍はその三つの首から、おのおのの異なる煙を吐き出す。
一つは毒煙、もう一つは幻影、残る一つは睡眠を誘う、乱派の源泉となる術に似た煙を、この怨龍は吐露するのだ。
《はあああ……》
もう、と無人の校舎に毒煙が放たれる。
唯斗は常日頃より持ち歩いているマスクを装着し、毒煙から身を守る。
こんなもの吸ったら、妖とて悶え苦しんで出てくるだろうな。
唯斗は余裕に思い、懐より呪符を取り出した。
(おし)
やるぞ、と気合を入れたのもつかの間で、数秒とせぬうちに、
「ぎゃあ!」
と野太い悲鳴が、教室を二つ越えたところの会議室から上がった。
《いやがったな》
怨龍が歓喜の声を上げる。
「いいや、ちょっと待て」
そこで、唯斗が僅かに身構えた。
妖の気配がしない。
肌がひりひりするような感覚があるから、悲鳴の主は人間ではないのだろうが、
妖の気配のようでもない。
すると、立ち込める毒煙の中から、二つの人影と、巨大な戦車が姿を現した。