X人のご主人と愉快な式神たちの話
「あっ、おめえはっ――――」
「あっ」
てめえは。
唯斗はとっさに舌打ちをしたい衝動に駆られ、それでも必死にそれを抑える。
煙の中から出てきたのは、あの、鬼門雅晴であった。
唯斗はとろけるような笑みを浮かべて、
「……奇遇だね、君も来てたんだ」
「おめえ、よくそんなことが言えるな。
毒ガスなんぞまき散らしやがって、あたしらを殺す気か。
ったく、学校に怨霊が出るって聞いたから来てみりゃあ……」
「あはは、君がいるって知らなかったんだ、ごめんね?」
すまなさそうに、小首を傾げて笑いかけてみる。
だが内心では、
(よく煙から走って逃げられたもんだな、デブのくせに)
などと嘲笑していたりする。
《おやっ、貴様ここになにをしにきた、このポンコツ兵士めが!》
怨龍が喚きたてる。
「骨だけの中身ない奴がうるさい」
負けじと兵士が毒を吐く。