放課後ワルツ
手応えを感じながら黙々とペンを動かしていると、それまでずっと黙って私の計算を眺めていた早瀬が、不意にこちらに手を伸ばしてきた。
その手は、私の顔の横に垂れていた髪を一房掬い、そして弄び始める。
まるで感触を確かめるかのような手つきで。
引いたり揺らしたり、梳いてみたり編んでみたり。
視界に入る早瀬の手の指は、やや節くれ立っているが、すらりと長い。綺麗な手だった。
その、愛でるようなしなやかな動きに。
「……あの、早瀬」
「何」
「集中できないんだけど…」
「そりゃそーだろ」
「……あんた、私の邪魔したいわけ?」
「うん、邪魔してる」
ブチ。
人を馬鹿にしてんのかこいつ!
私は渾身の力を込めて鋭く睨みつけてやったが、当の早瀬はそんなことは全くお構い無しに私の手からペンを奪い取った。