放課後ワルツ
「ちょっと休憩しよ」
私のペンを指先でくるくると回しながら、早瀬はそんなことを言う。
「休憩って……あと2問なのに」
折角やる気が出てきたというのに、2問を残してここで中断してしまうのには合点が行かない。
手を伸ばしてペンを取り返そうとすると、早瀬はペンを握った手を素早く引いて、代わりに私の回答欄を指差した。
「こことここ、計算ミスしてる。しかもさっきからずーっと、同じとこを書いたり消したりしてるし」
「え、うそ」
早瀬の指し示す箇所を見直してみると、確かに単純な計算を間違っていた。
……ちゃんと計算したつもりだったのに。
「根詰め過ぎて、頭が疲れたんだよ。休憩しろ」
ペチ。
ペンで軽く頭を叩かれ、気分はアンニュイ。
「…糖分取ってたのに」
「お前の脳のキャパの問題だろ。嫌いな数学に集中させ過ぎたせいで、崩壊寸前だろーな」
「……高々2時間くらいで?」
数学が苦手なのは自覚していたが、まさかここまで脳が拒絶していたとは。
……我ながら、情けない限りである。