放課後ワルツ





私の目の中を覗き込む、早瀬のダークブラウンの瞳。

日本人の瞳の色は黒ではなく茶色なのだと、以前誰かから聞いたことがある。

……本当だ。

そして、目に映るこの茶色が。
良い香りのする黒髪が。
大きくて優しい、綺麗な手が。

私を呼ぶその声が。


私は、



早瀬の視線に吸い込まれそうになりながらも、私は小さく首を横に振った。
早瀬の問いへの答えだ。

途端、早瀬は薄く微笑んで立ち上がり、

その腕で
優しく私を包み込んだ。


心臓が、止まりかける。


「俺だけ?」
「……うん」
「そっか」

胸がつまって、息が苦しい。
心臓がぎゅっと締め付けられるような、そんな感覚。

縋るように早瀬の腰に腕を回すと、早瀬も私を包む腕に力を入れた。

早瀬の体温を感じる。
さっきよりも、ずっと。


温かくて、心地好い。





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