放課後ワルツ
私の身体をすっぽりと包み込む早瀬の温もりに浸っていると、教室のスピーカーから音楽が流れ始めた。
――『花のワルツ』。
生徒下校完了30分前を知らせる、毎日恒例の校内放送だ。
グラウンドの方からも、ホイッスルの音が響いてくる。練習終了の合図だろう。
……もうそんな時間か。
あぁ、でも、結局。
「…課題、終わらなかった」
課題は今日中に提出するように言われていたが、脳がキャパオーバーしてしまった今、しかもこんな状況で、あと30分頑張るのは無理に近いような気がした。
「明日、朝イチで出せば」
早瀬が私の頭を撫でながらそう言うものだからつい、それでもいいかな、と思ってしまう。
悪魔の囁きはあれど、
天使は私に囁かない。
……まぁ、いっか。
今晩家で頑張って残りを解いて、明日提出する時に先生に謝ろう。