放課後ワルツ
「なんだよ」
「無視すんな」
「無視してねーだろ。返事したじゃん」
「……あんたさぁ、」
「んー」
「手伝ってくれる気あんの?」
頬杖を付きながら、ため息混じりに睨みつけてやると。
彼は眉を寄せて窓から離れ、こちらへ近付いてきた。
そして私の傍らに立ち、私の頬に手を伸ばして……
むぎゅ。
「い、痛!暴力反対!」
「何が暴力だコラ。居残りの分際でえっらそーに」
「スミマセン…」
彼に力一杯摘まれた頬を摩りながら、私はまたペンを握る。
目の前の机上に広がっているのは、数学の課題プリントたち。
提出を忘れていたがために、放課後居残りで解く羽目になった。
教室にひとりぽつねんと残されるのが嫌だったので、暇そうだった彼――早瀬に声を掛けて、課題を手伝ってもらおうと……
まぁ要は、ちゃっかり奴を道連れにしたという次第である。