放課後ワルツ





教室を出ると、どちらからともなく手を繋いでいた。
早瀬の大きな手は、私の手をいとも簡単に包み込む。


私も早瀬も、肝心なことは何も言わないけれど。

心はきっと、通じ合っている。


……多分。


「…それでいいや」

ぽつり、と私が呟くと、早瀬は首を傾げて怪訝な顔をする。
何でもないよ、と笑ってみせると、軽く頭を小突かれた。


遠くの空に落ちかけた日の淡い光が、何だか眩しい。

先程聞こえていた蝉の鳴き声が、まだ微かに響いている。

……仲間を呼ぶ、その声に。


「……誰かが気付いてくれたらいいよね」
「何の話?」
「ん?蝉の話」
「蝉?……あぁ、鳴いてんね」
「ひとりで寂しいんだよ」
「…加藤じゃあるまいし」


早瀬は可笑しそうに笑う。
私も笑った。


繋いだ掌に伝わる温もりが、そっと心を満たしていった。

そんなある日の、夕暮れの話。









*Fin*





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