放課後ワルツ
「……ありがとう」
なんか、泣きたい。
早瀬が戻って来たことが、こんなに嬉しいなんて。
「俺が居ない間も頑張ってたじゃん。まぁ、高々10分そこらだけど」
いい子いい子。
早瀬に頭を撫でられ、胸がつまった。心の中に留めていた感情が込み上がってゆく。
たかが10分。
されど10分。
私にとっては、その時間はあまりにも長い。
長かったよ。
ねぇ、
「早瀬ぇ……」
気付けば、私は早瀬の腰に腕を回して、彼に抱き着いていた。
カッターシャツ越しに早瀬の体温を感じて、安心する。
……あったかい。
「え、ちょっと何、加藤」
早瀬はというと、驚いた様子を見せながらも私を自分の身体から引き剥がそうとはしない。
そして何を思ったのか、いつまでも抱き着いたままの私の頭を、さっきよりも優しく撫で始めた。