放課後ワルツ
「寂しかった?」
そう尋ねてくる声も、心なしか優しく聞こえる。
「…急にどっか行くから」
「すぐ戻って来るに決まってんだろ。荷物もここに置いてったし」
「ひとりで居るの、苦手……」
「大袈裟だなー、たった10分くらいで」
笑いながら私の髪に触れる彼の手は、大切なものを扱っているかのようにふんわりと柔らかく動く。
愛しくて愛しくて堪らない、というように。
……嬉しい。
今、私たち、
こんなにも近い―――
って、
「ぅわあ!」
はたと自分が何をしているかに気付き、我に返った私は慌てて早瀬を突き放した。
突然奇声を発した私を見て、彼が唖然としているのは言うまでもない。
「ごっごめん!違う、今のは、あのーほら不可抗力で!」
「…不可抗力?」
「そう!だから決して変な意味はございません!」
捲し立てるはいいが、もはや言い訳にすらなっていない。…恥ずかし過ぎる。