シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


『ワンワンはん!!! 主に盛ってどないすんや!!! ワンワンはん、何の夢見てはるんや!! ちゃうちゃう、ここは"あの域"とは違いま!!! というか、"あの域"ってなんや!!? 情報屋としては知らん情報は見逃せまへんな~。一流情報屋の沽券にかかわりますんや!!! ワンワンはん、ワンワンはん!!!』


体が…揺れる。

首に擽(くすぐ)ったい…なんだこのふさふさ。


ふさふさ…。


――あたし、ふさふさワンコだあい好き!!


薄い視界の中――

オレンジ色のふさふさした毛並の大きな犬が、俺にのしかかって尻尾を振っていた。


『ほっ。ようやく目覚ましたかいな、ワンワンはん!!!』


犬……。


俺は…犬が好きだ。

昔から本当に大好きなんだ。


『俺、何やってんだ!!!?』


姿を変えてからは、興味ないフリをしていたけれど。


『やばやば。俺…芹霞と間違えて"あの域"研究する処だった。おい、櫂。櫂…? おいアホハット、櫂は大丈夫なんだろうな!!?』


犬は…癒される。

心が和んでくる。


『大丈夫や!! 櫂はん…夢に執着して、自主的にこちら側に帰ってきてくれないんや。けど…"あの域"って何処なんや? え? だから研究中? はあ…玲はんか久遠はんに? …おおきに。今度情報仕入れますわ』


それが喜んで俺の元に来るのなら。

俺に尻尾を振ってくれるなら。


『櫂、起きろ。櫂…櫂…?』


ああ、やっぱり俺…


『――あ?

ああああああ!!!?』


特に柔らかな毛がふさふさの犬は…



「ワンワン…ぎゅう…」



好きなんだ。

ふさふさに顔を埋めたくなる程。



「ワンワン…大好き…」



ずっとずっと…戯れていたい。



< 100 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop