シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
『ワンワンはん!!! 主に盛ってどないすんや!!! ワンワンはん、何の夢見てはるんや!! ちゃうちゃう、ここは"あの域"とは違いま!!! というか、"あの域"ってなんや!!? 情報屋としては知らん情報は見逃せまへんな~。一流情報屋の沽券にかかわりますんや!!! ワンワンはん、ワンワンはん!!!』
体が…揺れる。
首に擽(くすぐ)ったい…なんだこのふさふさ。
ふさふさ…。
――あたし、ふさふさワンコだあい好き!!
薄い視界の中――
オレンジ色のふさふさした毛並の大きな犬が、俺にのしかかって尻尾を振っていた。
『ほっ。ようやく目覚ましたかいな、ワンワンはん!!!』
犬……。
俺は…犬が好きだ。
昔から本当に大好きなんだ。
『俺、何やってんだ!!!?』
姿を変えてからは、興味ないフリをしていたけれど。
『やばやば。俺…芹霞と間違えて"あの域"研究する処だった。おい、櫂。櫂…? おいアホハット、櫂は大丈夫なんだろうな!!?』
犬は…癒される。
心が和んでくる。
『大丈夫や!! 櫂はん…夢に執着して、自主的にこちら側に帰ってきてくれないんや。けど…"あの域"って何処なんや? え? だから研究中? はあ…玲はんか久遠はんに? …おおきに。今度情報仕入れますわ』
それが喜んで俺の元に来るのなら。
俺に尻尾を振ってくれるなら。
『櫂、起きろ。櫂…櫂…?』
ああ、やっぱり俺…
『――あ?
ああああああ!!!?』
特に柔らかな毛がふさふさの犬は…
「ワンワン…ぎゅう…」
好きなんだ。
ふさふさに顔を埋めたくなる程。
「ワンワン…大好き…」
ずっとずっと…戯れていたい。