シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
"いいとこつきなはる"
何で、そんな表現だ?
まるで煌が指摘したことが、重要であるというような言い方。
煌が指摘したこと…?
俺が芹霞の家の隣に住んでいたその間のこと。
12年前から4年間。
何か…この男にとっても意味があるのか?
ふと…思った。
芹霞の母親と俺の母親は幼なじみで、俺は神崎家全員に育てられたのも同然だったけれど。
まず――。
何で、俺達母子は、芹霞の隣の家に即入居できた?
働き手がいないのに、何故生活出来た?
心臓病の往診と治療薬の代金はどこから出した?
神崎家がそこまで全て面倒を見ていたのか?
それとも――。
紫堂から金を貰って、追い出されていたのか?
あの親父が、そんなことを?
当然と思って見過ごしていたものが、懐疑的な事象と変わりゆく。
「選ばせてやろう」
そう言ったのは、えげつなく笑う男。
「私は何も知らなすぎるお前達に、少々語りすぎたようだ。私は匡のように酷薄ではないし、ここまで来れたことに敬意を示し、お前達が望む情報を、ひとつだけ開示しよう」
笑う。
笑う。
含んだ笑いを響かせる。
まるで復讐を果たしたいかのような、ぎらついた茶色の瞳で。
「玲を中心とした『ティアラ計画』のことか。
久涅が何故五皇となり、いつ無効の力を目覚めさせて、お前と同じ顔になったか、か。
お前の父親母親に関してか。
緋狭やこの情報屋が知り得る五皇の盟約のことか。
それとも今、表世界で起きていることについてか。
約束の地(カナン)が何故爆破され、各務久遠の現状はどうなっているか、か。
お前や玲が今何に巻き込まれているか、か。
"ヨウシュ"たる煌が、何故黄色い外套をつけていたか、或いは緋狭が何を隠しているか、か。
現在のお前の愛する女と玲がどのようになっているか、か?」
並べられる…知りたいこと。
「どうなれば強くなり、現状打破出来るか、か」
そして――。
「それとも…
囚われている緋狭を助ける手段か」
どくん。
俺は煌と顔を見合わせた。
俺が選べるのは――
「それとも別のことか?
ひとつだけ、話してやろう。真実を。
さあ…どれを選ぶ?」
ひとつだけ。
「どれがお前にとっての、最優先すべき重要事項だ?」
だから。
「さあ選べ。時間は、お前達を待たないぞ?」
だから俺は――。