シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
移動 桜Side
桜Side
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何が裏で動いているのかがよく判らない。
あの時――。
凱とBR001が現われて、芹霞さんを抱え…臨戦態勢に入った私。
私は戦う気でいた。
しかし今思えば、向こうふたりに敵意めいたものはあっても、殺気はなく。
動物の本能をアテにしていいのなら、クオンはただ瑠璃色の目を向けるだけで威嚇はしていなかった。
そのクオンが唸りだして、明らかに威嚇を始めた先に居たのは…七瀬周涅。
正直、この示し合わせたような"勢揃い"に、私は舌打ちした。
クオンがいるとはいえ、分が悪すぎる。
しかし、そんな私達に道を示したのは、BR001と凱。
――行け。移動手段は用意している。
顎で示したのは、陽斗の眠る雑司ヶ谷の霊園。
そこから徒歩何分かの至近距離。
何故そこに向っていると判ったのか。
何故移動手段を用意していたのか。
――ちぇっ。戦いたかったなあ…。仕方ないよな…。
不満足そうに私を見送る凱に、第三者の存在が居ることを悟る。
――紫堂玲がいるのは、"こちら側"ではなかったのか!!
そして七瀬周涅。
氷皇によく似た顔で、氷皇と似た胡散臭い喋り方を放棄してまで、直球的に向けた言葉に、僅かに戸惑う。
"こちら側"
玲様がいないことに対して、憤慨しているようにも思えた。
それは彼が予想を外した、その矜持のせいもあるかもしれないけれど、周涅自身が玲様に会いたがっていたようにも思えた。
玲様を連れ戻しにでもきたのだろうか。
どうしても妹との…子供の父親にさせるつもりなのか。
朱貴が守っているはずの七瀬紫茉は今、周涅の手の内なのか?
そんな疑問も言葉に出す間もなく、
――ここからは、我らがお相手しよう。
そう言って、私達を庇うように前に立ったのはBR001。
周涅と同じ顔を持つ男。
銀色は、赤銅色に挑戦状を叩き付けた。
――お前…何故出て来た!!?
そんな不可解な言葉を放つ赤銅色に、
――ヨウシュは裏にいる。もうすぐ…"時間"だ。
銀色は表情を変えずして淡々と返す。
私達を取り残し、意味不明な言葉を交わす銀と赤銅。
その言葉で、赤銅色は忌々しげな顔つきで舌打ちした。
――ごめんね~。そういうこと!!
周涅が仕える皇城家の、しかも今まで同居していた次男坊の護衛役も、会話に加わるように銀色の横に立ち、武器の匕首をくるくる手で回す。
匕首は日の光を浴び、きらきらと銀色に輝き、BR001の色に同化していく…そんな錯覚に、一瞬だけくらりとした眩暈を感じて、思わず目を閉じた。
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何が裏で動いているのかがよく判らない。
あの時――。
凱とBR001が現われて、芹霞さんを抱え…臨戦態勢に入った私。
私は戦う気でいた。
しかし今思えば、向こうふたりに敵意めいたものはあっても、殺気はなく。
動物の本能をアテにしていいのなら、クオンはただ瑠璃色の目を向けるだけで威嚇はしていなかった。
そのクオンが唸りだして、明らかに威嚇を始めた先に居たのは…七瀬周涅。
正直、この示し合わせたような"勢揃い"に、私は舌打ちした。
クオンがいるとはいえ、分が悪すぎる。
しかし、そんな私達に道を示したのは、BR001と凱。
――行け。移動手段は用意している。
顎で示したのは、陽斗の眠る雑司ヶ谷の霊園。
そこから徒歩何分かの至近距離。
何故そこに向っていると判ったのか。
何故移動手段を用意していたのか。
――ちぇっ。戦いたかったなあ…。仕方ないよな…。
不満足そうに私を見送る凱に、第三者の存在が居ることを悟る。
――紫堂玲がいるのは、"こちら側"ではなかったのか!!
そして七瀬周涅。
氷皇によく似た顔で、氷皇と似た胡散臭い喋り方を放棄してまで、直球的に向けた言葉に、僅かに戸惑う。
"こちら側"
玲様がいないことに対して、憤慨しているようにも思えた。
それは彼が予想を外した、その矜持のせいもあるかもしれないけれど、周涅自身が玲様に会いたがっていたようにも思えた。
玲様を連れ戻しにでもきたのだろうか。
どうしても妹との…子供の父親にさせるつもりなのか。
朱貴が守っているはずの七瀬紫茉は今、周涅の手の内なのか?
そんな疑問も言葉に出す間もなく、
――ここからは、我らがお相手しよう。
そう言って、私達を庇うように前に立ったのはBR001。
周涅と同じ顔を持つ男。
銀色は、赤銅色に挑戦状を叩き付けた。
――お前…何故出て来た!!?
そんな不可解な言葉を放つ赤銅色に、
――ヨウシュは裏にいる。もうすぐ…"時間"だ。
銀色は表情を変えずして淡々と返す。
私達を取り残し、意味不明な言葉を交わす銀と赤銅。
その言葉で、赤銅色は忌々しげな顔つきで舌打ちした。
――ごめんね~。そういうこと!!
周涅が仕える皇城家の、しかも今まで同居していた次男坊の護衛役も、会話に加わるように銀色の横に立ち、武器の匕首をくるくる手で回す。
匕首は日の光を浴び、きらきらと銀色に輝き、BR001の色に同化していく…そんな錯覚に、一瞬だけくらりとした眩暈を感じて、思わず目を閉じた。