シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
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俺の視界の中で、オレンジ色の髪の毛をした幼馴染が、四つん這いになりかけた奇妙…かつ器用な格好で動かない。


俺が目覚めた時、起きて動いていたのは情報屋だけで、その情報屋は手元の"何か"をカチャカチャし終えると、煌の固まった理由を俺に説明した。


俺は、一笑に付した。


「何で俺が、"ワンワンぎゅう"だの"ワンワン大好き"だの言いながら、煌に抱きつかないといけないんだ? 冗談はよせ、情報屋」


昔の俺でもあるまいし。


「ひーちゃんは嘘ついてまへんがな!!! だから櫂はんが、"ワンワン""ワンワン"言いはって、ワンワンはんに抱きついたから、ワンワンはん固まって動かなくなりましたんや!!!」


視界の端では、目覚めた翠とクマが、俺と情報屋の会話のやり取りを聞いて、不可解な顔をしている。


「なあ…クマ。何がなんでも…紫堂櫂が、ワンコに幼稚園児みたいな言葉を吐いてくっつかないよな~? そんなことあったら、大地震だよな?」

「ああ、『気高き獅子』が寝惚けていたって、そんなことは言わない気がするんだがな」


「なんやなんや!!! ひーちゃんは嘘つきまへん!!! もうこうなったら…最終手段の動かぬ証拠!!! これを見ぃ!!!!」


情報屋が取出しして突き付けたのは…


「iPhone…?」 

「そ~や!! iPhoneはiPhoneでも、ひーちゃん印のiPhoneや!!!」


威張りクサって鼻高々だが…要するに、改造ものだと言い張ってるだけだろう。


「この動画を見よ!!!」


俺達は、言われるがまま…画面に視線を向けた。

暗くてよく判らないものがもぞもぞ動いているようだ。


………。


何か…舌っ足らずの声が聞こえる。

何を言っているのか、聞き取ろうと耳をすました俺。



『大根…』

『ワンワン…』



………。



俺の額に、汗が滲んだのが判った。

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