シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
俺はその機械を引ったくると、一人で覗き込む。
『ワンワンぎゅう…』
『ワンワン大好き…』
………!!!!!
俺は――…
画面左下にある"編集"ボタンを素早く押すと、隣の"削除"のボタンを押した。
所要時間…恐らく1秒かかっていないはず。
俺だって玲の血を引いているんだ。
機械慣れしてなくても、やる時はやる。
「櫂はん、勝手に何しなはるんや!!! あ~!!! あ~!!!?」
情報屋の悲鳴交じりの声を完全無視。
『削除しますか?』
『OK』
よし。
これで全ては闇の中。
「あ~!!! あ~!!!」
「聖、何あったんだよ。俺見てないんだけれど」
「あ~だけじゃ判らんが、情報屋。…もし何なら、俺がデータを復旧…「いらん!!!」
俺はクマを睨み付けた。
その時、iPhoneから音が鳴り、ふと画面を見れば…
『メールを送信しました』
何だこのメッセージ。
………。
何を送信した?
嫌な予感がする。
確認しようとした俺の手から、iPhoneをひったくった聖。
だから俺は威嚇する。
「情報屋。何処に何を送った…?」
すると情報屋は、横を向いて口笛を吹き始めた。
「がはははは!!! それは今は懐かしアニメ"怪物くん"のテーマソングじゃないか。あれか?」
「おお、クマさすがは古株!! おおきにおおきに!!!」
俺だって…判る。
"か~いかいかい、か~いかいかい♪"
つまり、俺に関係するものだということだ。
そしてこんなに送信に時間がかかっていたということは、容量が大きいデータを送っていたわけで。
………。
例えば――…
動画とか。
動画とか動画とか動画とか!!!
「情報屋…!!!」
俺は聖の胸倉を鷲掴んで声を荒げた。
「ひいいいい!!!? ええやんか、ええやんか!! ひーちゃんは情報屋なんや!!! それにもう送ってしもえうたんや!!! 誰とは言えへんけど。てへぺろっ…」
いらっ…。
「ひいいいい!!! ひいいいいい!!! 櫂はん、首絞めはるな~。ぐええええええ」