シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


そんな感じで傍観していた中、数台のゴーストライダーが、あたし達に向って追いかけて来たという認識が遅れてしまったんだ。


警戒するよりも前に、あたしに向けられた銃口。


「くっ、間に合わない!! 桜、その銃を寄越せ!!!」


発射される銃弾。


あたしはどうすることも出来ず、ただ体を強張らせて固まっていた時、


バン、バン!!

バン、バン!!



バタバタと倒れる敵のバイク。

硝煙が揺らぐ玲くんの拳銃。

しかも二丁…恐らく全て命中。


三つ編みのミス桜華、バイクを操り銃もいけます。

格好いい…お姉様…。


そしてクールなお姉様は、再び桜ちゃんと戦場に戻り、桜ちゃんと交互にバイクを操り、敵の数を減じている。


玲くんは電気の力を使わない。

多分、0と1が虚数に侵蝕されようとしているから、極力使わないようにしているのだと思う。


本当に0と1思いの人だ。

それだけ、玲くんにとっては特別な愛すべき対象なんだろう。


妬けてしまうほど。


そんな紫堂の力を使わなくてもいい玲くんの強さは憧れる。

そしてそんな玲くんに、相棒として見こまれた桜ちゃんの強さにも憧れる。


今のあたしは…ただの足手纏いなのがよく判るから。


「ひぃぃぃぃぃっっ!!」


しかし由香ちゃん、凄い脚力だ。

まるで後ろで起こっていることは判っていないだろう。

火事場のなんとやら、だ。


ドカーーーン。


爆発音で、"約束の地(カナン)"を思い出し、再び後ろを振り向けば。

大火炎の中、玲くんのバイクは走り抜けてきた。


ほっとすると同時に、得体のしれない不安を感じたのは、バイクを追いかけるように走ってきた――


「犬!!!?」


否。


あれは――…

四つん這いで走る…醜悪な肉の塊。怪物(クリーチャー)。


ボロ切れを体に纏い、火傷に皮膚は爛れているけれど。

3本の長い突起のようなものを忙しく動かして猛速度で移動するそれは、口が耳元まで裂けて、赤いひらひらとした…舌らしきものを出して。


野犬のような獰猛さを見せつけながらも、野犬の方がまだ可愛い。

何処かのゲームで見たような、ゾンビ犬のようなおぞましさがある。


だけどこれは現実。

これは一体なに!!!?

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