シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
芹霞が今の俺を求めてくれないから、だから俺は、今の今まで芹霞を手に入れられなかった。
手に入らないのは言葉にしていないからだと言い訳し続けて、実際言葉にしても、俺は芹霞の心を向けることが出来なくて。
俺の"特別性"を恋愛の意味に昇華することが出来なくて。
――お前、12年かけて何してるんだよ?
そう12年。
12年かけて手に入れたはずの芹霞の心は、
――馬鹿か、お前。
一瞬で消え去った。
それが現実。
――紫堂櫂を愛してる!!!
あの言葉は…
今の俺に対してだったんだろうか。
昔の面影を一切切り離して、純粋に俺を求めてくれたのだろうか。
今となっては判らない、闇の中。
だけど、今の俺が。
芹霞にとって過去を持たない俺が。
もしも――
この先芹霞の心を独占出来たのだとしたら…。
それこそが俺の…長年の願望が達成されることになるんじゃないだろうか。
過去を失った今の俺が、どこまで魅力があるのか。
…今こそ、俺の真価が問われるのだろう。
芹霞との過去を持つ、玲と煌と…久遠。
芹霞との過去を持たない俺。
恐らく――
今こそが、俺の正念場。
振り向かせてやろう。
今まで芹霞が俺をみなかったのは、過去の残像故のことだったというのなら。
残像を消した中で、今の俺を刻みつけてやれ。
それでも俺に興味がないというのなら。
それでも別の奴を選ぶというのなら。
俺の…8年間の努力は失敗だったということだ。
自惚れ。
自己満足。
俺の力の足りなさを、今まで芹霞のせいにし続けてきただけの話。
俺が未熟過ぎただけの話。
仕切り直しだ。
0から始めろ。
初心に帰れ。
何度でも挑戦しろ。
不可能のことを可能にしろ。
貪欲に行け。
俺は大きく息を吸った。