シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
選択 煌Side
煌Side
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絶対――
後先考えずに怒鳴っちまった俺のせいだ。
「さあ選べ。時間は、お前達を待たないぞ?」
目の前には、悠然と…櫂を見つめる老けた玲。
そして面白そうに傍観するアホハット。
俺がキレて、玲の親父を怒鳴ったせいだ。
これでも俺、出来るだけ抑えたんだ。
玲に愛情を示さねえ理由は、櫂の父親にあると言う。
櫂の母親と恋仲だったからと切々と訴える。
だからその間の子供、久涅を助けたいのだと言うけれど。
まるで…自己弁護だ。
櫂に堂々と櫂の母親との愛を語るなら、その惚れた女が極悪男との間に子供が出来た時…いや出来る前にでも、奪いにいって然るべきだと俺は思ったんだ。
俺ならそうする。
自由を奪われて抵抗出来ない状況で、どんなに絶望的な光景が繰り広げられていようと、更にその先に闇が待ち受けていたとしても。
惚れ込んだ女を、置き去りにはしねえ。
ましてや、惚れた女も不可抗力的な事態。ならば尚更、例え俺が死んでも助け出したいと思う。そう動く。
しかし、あれだけ櫂の母親への愛を口にした男は、櫂の父親と関係を持った以降、まるきり無視。そして代って出て来るのは久涅の名だけ。
自分は強要された女との間に玲を作っておいて、玲を過ちの子供と省みず、自分の意にそぐわなかったから櫂の母親は切り捨て、あとは久涅に執着する。
久涅の為にと玲を犠牲にして…責められると櫂の父親が悪いとする。
櫂のやったことが悪いと詰る。
俺にはただ…人のせいにして、延々と辛い現実から逃げている…女々しい言い訳にしか聞こえなかったんだ。
確かに櫂の父親は異常だ。
蛆の称号も持ち、まだまだ何か隠されているような俺は父親知らず。
もしかして父親は"蠅男"ではないかとさえ思っている…人として異質な俺が、理想の父親像を語っても説得力がねえかもしれねえけど、
櫂を見殺しにした父親の精神は、人としてもまともじゃねえ。
それは判っている。
そんな男に人生を狂わされ、恨んでいるのもよく判る。
だけど――
少なくとも惚れた女に対して。
侠気見せるのが"男"ってもんだろう。
人のせいにして、泣き寝入りするなよ!!
自分で動いてみせろよ!!
同じ家で惚れた女が虐げられていて、何で助けねえよ。
追い出された惚れた女を、自分のいない処で病死させるなよ!!
放置するなよ!!
俺が…芹霞に対してならしたいと思うその心が、男にはなかった。
だから不用意にも苛ついて出た言葉が男の機嫌を損ね…俺達へ選択肢を突き付けられることになったんだ。
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絶対――
後先考えずに怒鳴っちまった俺のせいだ。
「さあ選べ。時間は、お前達を待たないぞ?」
目の前には、悠然と…櫂を見つめる老けた玲。
そして面白そうに傍観するアホハット。
俺がキレて、玲の親父を怒鳴ったせいだ。
これでも俺、出来るだけ抑えたんだ。
玲に愛情を示さねえ理由は、櫂の父親にあると言う。
櫂の母親と恋仲だったからと切々と訴える。
だからその間の子供、久涅を助けたいのだと言うけれど。
まるで…自己弁護だ。
櫂に堂々と櫂の母親との愛を語るなら、その惚れた女が極悪男との間に子供が出来た時…いや出来る前にでも、奪いにいって然るべきだと俺は思ったんだ。
俺ならそうする。
自由を奪われて抵抗出来ない状況で、どんなに絶望的な光景が繰り広げられていようと、更にその先に闇が待ち受けていたとしても。
惚れ込んだ女を、置き去りにはしねえ。
ましてや、惚れた女も不可抗力的な事態。ならば尚更、例え俺が死んでも助け出したいと思う。そう動く。
しかし、あれだけ櫂の母親への愛を口にした男は、櫂の父親と関係を持った以降、まるきり無視。そして代って出て来るのは久涅の名だけ。
自分は強要された女との間に玲を作っておいて、玲を過ちの子供と省みず、自分の意にそぐわなかったから櫂の母親は切り捨て、あとは久涅に執着する。
久涅の為にと玲を犠牲にして…責められると櫂の父親が悪いとする。
櫂のやったことが悪いと詰る。
俺にはただ…人のせいにして、延々と辛い現実から逃げている…女々しい言い訳にしか聞こえなかったんだ。
確かに櫂の父親は異常だ。
蛆の称号も持ち、まだまだ何か隠されているような俺は父親知らず。
もしかして父親は"蠅男"ではないかとさえ思っている…人として異質な俺が、理想の父親像を語っても説得力がねえかもしれねえけど、
櫂を見殺しにした父親の精神は、人としてもまともじゃねえ。
それは判っている。
そんな男に人生を狂わされ、恨んでいるのもよく判る。
だけど――
少なくとも惚れた女に対して。
侠気見せるのが"男"ってもんだろう。
人のせいにして、泣き寝入りするなよ!!
自分で動いてみせろよ!!
同じ家で惚れた女が虐げられていて、何で助けねえよ。
追い出された惚れた女を、自分のいない処で病死させるなよ!!
放置するなよ!!
俺が…芹霞に対してならしたいと思うその心が、男にはなかった。
だから不用意にも苛ついて出た言葉が男の機嫌を損ね…俺達へ選択肢を突き付けられることになったんだ。