シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
選択肢――。
それはどれも欲しい情報だというのに、解答を得られるのはただひとつ。
見事な…ドSの反撃(カウンター)。
俺が黙っていれば、最低でも玲が関係しているらしい『ティアラ計画』くらいは、勝手に話してくれただろうに、それすら選択肢の1つ。
俺達は選ばないといけなくなった。
誰を最優先させるべきかと。
俺はいい。
蛆だろうがワンコだろうが、櫂についていくと決めたからには、その関係が崩れなきゃそれでいい。
例え…緋狭姉が、俺に関する何かを隠していようと、俺が今知りたい緋狭姉の秘密は、それじゃねえ。
緋狭姉が何を抱え、どうすれば助けられるか。
だけど――
助けたいのは緋狭姉だけじゃねえんだよ。
知りたい情報は、それだけじゃねえ。
以前、木場の地下室で、小猿の兄貴が選択を突き付けた。
玲を助けるか、緋狭姉を助けるか。
俺はもう…あんな思いは嫌なんだ。
選ばれなかった奴のことを思うと、心が痛いんだ。
血を吐く思いの決断であろうと、そんなの…結果から見れば関係ない。
見捨てた結果は、真実だ。
「さあ、誰を選ぶ? 誰を助けたい? 誰を切り捨てる?
お前自身か? 煌か? 玲か? 緋狭か?」
櫂は苦渋の色を顔に浮かべて、男を睨んでいる。
「それとも――
そこでこちらを覗いている…あの者達か?」
促した先には、部屋の片隅で心配そうな顔を向ける…
「小猿、チビリス、小小々猿…」
………。
…あの、パンパンに膨らんだ腹。
どれだけ食ったんだ、こいつら。
まあそれはいいとして、いつの間に此処に来たのだろう。
両脇にいるクマとこけしが、この部屋に案内したのだろうか。
クマとこけしは、アホハット同様…傍観者の立場(スタンス)を貫く気らしい。
助けて貰おうという気はねえけれど、元々助けようという気はないようだ。
それ処か、櫂がどんな決断を下すのか…興味深げで見ている。
「皇城雄黄の変貌でも、皇城家が抱えている秘密でも、皇城翠の強くなる方法でもいいぞ? それとも皇城をどうしたら建て直せるか、かな?
…それでも、選べるのはひとつ」
くつくつ、くつくつ。
えげつない顔で、老けた玲は笑う。
「紫堂櫂……」
櫂を見つめる小猿は、何を思っているだろう。
そりゃあ…小猿だって、色々知りたいよな。
家の改革のために、そして強くなるために。
世間知らずの小猿も必死に裏世界を駆け回った。
それを櫂も十分判っている。
翠の可能性を信じ、伸してやろうと…櫂はしていたんだから。