シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
………。
………。
は?
それは、用意されていた…重要度の高い選択肢にはないもので。
しかも――
「はああああ!!!?」
"その他"の分類としても、俺には思い浮かびもしない、はっきり言ってどうでもいいことで。
俺は焦って、櫂の双肩を両手で掴んで前後に揺すぶった。
「か、櫂…よく考えろ。情報はひとつしかねえんだぞ!!?」
「ああ、だからだ。だからこそ、この質問しかない」
どんなに俺に揺らされても、櫂は主張を曲げねえんだ。
不敵に笑うだけ。
「ねえ…サル。それは、僕がもっと沢山の胡桃をカリカリ出来る方法? それとも芹霞にぎゅっとして貰って、ちゅうして貰う方法?」
「翠殿。それは、ここまで腹が苦しくならずとも、簡単に我が大きくなれる方法か? それとももっと敵を蹴散らして、武勲を上げる方法か?」
………。
「煩悩塗れを黙らせろ、小猿!!!」
小猿が驚いて飛び上がった。
「櫂はん。証人として、確かめま。
ファイナルアンサー?」
「YES」
迷いない断言に、誰もが固唾を呑んだ。
玲の父親が裏世界に居た理由を知ったからなんだっていうんだ?
櫂の親父に追放されたから来たんだろうが。
さすがのお前でも、ちょっとおかしくなっちまったか?
貪欲な『気高き獅子』も、お疲れモードか?
何を他人事のように!!
俺のせいだ、全部俺のせいだろうが!!!
「翠殿。何故ワンコ殿は、突然頭を抱えて、足をダンダン鳴らし始めたのだ?」
「ゴボウ。頭がいい僕が教えてあげる。ワンコは"どじょうすくい"を踊りたいんだよ。くくくく。へたっぴだね。はあ…呆れてものが言えないよ」
「なんと!! ならば、我らで教えて進ぜようぞ?」
………。
「小猿!! とにかく黙らせろ!!」
またもや小猿が飛び上がったのが見えた。
くそ、こっちは真剣なのによ。
何処までも笑われるのがオチじゃねえか!!
だけど。
ちらりと見た玲の親父は――
「………っ」
顔を歪ませていたんだ。
「!!!?」
ひたすら悔しそうに。
「がはははははは!!」
響き渡る豪快な笑い声は、振り返らずとも判る。
毛のないクマだろう。
「さすがは貪欲な『気高き獅子』!!! 見事!!」
そう言うと、再びクマは豪快に笑った。