シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
驚いたのは五皇のことだけじゃねえ。
目を抉る黄色い蝶。
それとワンセットの仮面被った黄色い外套男は――
「外套男が、あの蝶を操っているのではないのか?」
そう。
櫂と同じ認識だった俺。
"追いかける"
つまり、同胞ではないということか?
「ノンノンや、櫂はん。黄色い外套男…通称"黄衣の王"は、ただの"時間"の監視人。来たるべき刻…羅侯(ラゴウ)によって"時間"の均衡が崩れた処から、黄色い蝶が現れる。それを見届け、時間軸をあるべき姿に整えるのが、"黄衣の王"の使命。
"黄衣の王"が蝶をどうこうは出来まへんのや。あくまで傍観の立場なんや」
何でこいつはそう言い切れる?
だって実際は――
「"黄衣の王"だって、人間の首刎ねてるじゃねえか。人間の目を抉る蝶と、同じ穴の……。穴の……。穴……」
「ムジナだ、煌」
「そう、それじゃねえか!!」
格好よく決められなかったけど、しかも俺が威張って言うことではねえけど。
芹霞と桜と再会したS.S.A――。
実際俺は…大量の人間の首を刎ねていたんだから。
知らぬこととはいえ、黄色い外套を纏って。
刻み込まれた俺の宿業(カルマ)。
あんな大量の屍を築いた俺は…。
「人間っちゅうもんは、姿が消えるもんやろか?」
アホハットは、笑う。
まるで現場を見たかのように。
「あ? 人間じゃ…ないと…?」
確かに――
不自然にそっくり死体は消えていたんだ。
人間じゃねえから消える?
は!!?
人間じゃないなら、あれ何よ?
「こちら側には居てはいけない住人。それしか言えん」
こちら側ってなによ!?
「蝶は、さながら債権回収の役目や。
目という"通行料"を回収してる」
"通行料"
「"サンドリオン"……」
櫂が呟く。
「楽園……」
それきり言葉は出ず、考え込む櫂。
それをアホハットは満足そうに見ていた。