シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「ただし蝶の能力は限界があるんや。少女しか回収出来へん。そこで相棒みたいな…蝶に追補する形で創り出されたのが…"黄衣の王もどき"。それが蝶が向わない"それ以外"に向う」
つまり、俺達が今まで見てきた黄色い外套男は、もどきもいたらしい。
俺はそのうちのひとりだ。
何で俺そんなことしてたよ?
誰かが俺を操ったとしか思えねえ。
それに――。
「何でわざわざあんな格好を…「……攪乱か?」
櫂が言う。
「黙秘権や」
さっぱり判らねえ櫂の言葉を聞いたアホハットは、嬉しそうにまたもや"黙秘権"を執行する。
更にわけ判んないじゃねえか!!
おかげで櫂はまただんまりして、考え込んでいる。
「誰が"もどき"を作っているよ? きっとお前はもう知っていると思うけど、俺もそのひとり。羅侯(ラゴウ)なんて俺、関係ねえぞ」
するとアホハットの唇が弧を描く。
歪んだ笑い方だと…俺は思った。
「ワンワンはん…表世界で蛆塗れだったのを裏で治療されて、表に戻れたやろ? 裏世界は無償の治療場ではあらへん。"通行料"をとらへん代わりに、正規の"治療代"を支払って貰っただけや」
「ち、治療代…「ならば!!」
遮るように、突如櫂が声を上げた。
「榊が…黄色い外套を纏って"約束の地(カナン)"に現われたのは、ここで"生き延びた"からか!!」
「は、榊!!?」
アホハットは薄い笑みを浮かべた。
それを黙って見つめた櫂は、何か腑に落ちないような顔をしながら、また考え込んでいる。
……ああ、櫂の頭の中を覗いたら、きっと扇風機以上の速さで何かが回転しているんだろうな。
俺の頭の中の扇風機なんてポンコツで。
まあ…俺だけではねえみたいだけど。
小猿が石のように固まっている。
理解しようとする以前の問題らしい。
「…けどよ、何で裏が求める治療代が、人の首刎ねる黄色い外套男よ? 関係ねえじゃんか。しかも問答無用だろ?」
俺はどうやって、その役目を仰せつかったのか。
何だか俺…制裁者(アリス)といい、操られてばっかで反吐が出そうだ。
蛆、だし…。
「羅侯(ラゴウ)を…守る為。
それもまた、盟約に関わるからか?」
そんな櫂の問いに…
「そうや」
アホハットは、実に愉快そうに笑った。