シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「それにワンワンはん。これを"無駄"なことだと言いはるなら、さくっと"回避"すればいい話やろ?」
情報屋は、焚き付ける。
「出来ないのなら…裏世界の本当の入り口にも行けまへんわ。今の内に帰るがよろし。それこそ此処にいる時間自体が無駄ですわ」
何処までも挑発的な、そして何処までも辛辣な言葉で。
「それに…案内(ガイド)はあくまで道標であって、助言はしても正解は言わへん約束や。そやからこの先も突き進むのは、ワンワンはん達の力だけ」
つまりは…この先も、謎かけのような罠(トラップ)があり安穏な道のりではないということか。
だけどそれは承知の上。
それに緋狭さんは言っていたじゃないか。
――坊、裏世界は…甘くない。
ならば――
「櫂、何でお前嬉しそうよ?」
煌が頭を抱えたまま、俺を不思議そうに見つめた。
「わくわくしてこないか?」
そう言うと、煌はおかしな奇声を上げて、頭をガシガシ掻いた。
「…紫堂は元々好戦的だからな、玲もそうだけど」
俺は笑いながら言った。
「煌、お前だって判っているだろう? 緋狭さんが裏世界に行けと言ったからには、俺は…俺達は、何が何でも裏世界に行かねばならない。緋狭さんが了承していたにしろ、していないにしろ…例えその前に何が待ち受けていようとも…」
「………。…くそっ、仕方がねえ。
おい、アホハット!!!
絶対…櫂は、トリ頭野郎に負けねえからな!!!」
情報屋に人差し指を突きつけて叫ぶ煌に、俺は苦笑する。
「煌…。此処からは…"俺達"の問題だ。
お前の知恵も貸せよ」
"協力"が必要な気がする。
1人で何とか出来るのなら、情報屋は俺だけを連れるよう誘導しているはずだろう。
そしてそれは多分、緋狭さんの意思でもあると思っている。
個人プレイに走るな、と。
過去もよく緋狭さんに警告されていた。
特に芹霞絡みになると、俺は暴走しやすいから。
だから、俺の暴走抑止に煌がいる。
…そんな気がするんだ。
「はああああ!!? 俺に知恵!!!?」
「はあああ!!? ワンコに知恵!!?」
「……。小猿に言われるとカチンとくるな」
「何だよそれ」
「翠。お前人事だが…お前の知恵も貸せよ?」
「はああああ!!? 俺に知恵!!!?」
「はあああ!!? 小猿に知恵!!?」
「……。ワンコに言われるとカチンとくるな」
「何だよそれ」
「なんやなんや…似た者同志の緊張感ない2人やな」
「がははははは!!!」