シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

そして僕の身体に抱きついてくる。



「かかかかかかかか」

「……?」


どうしたんだろう。


「何この子。痰が絡んでいるのなら…「違うわッッ!!!」


ようやく人間語を喋り始めた芹霞は、大きく息を吸って、そして怒鳴った。




「玲くんに…近寄らないで!!!

玲くんは、あたしの…

かかかかかかかか……」



……?



「うがいをしたいなら「だから違うッッッ!!!」


美咲さんの質問を真っ赤な顔で返し、そして叫んだ。



「玲くんは…あたしの…

かかかかかかか…


彼氏さんなんだからッッッ!!!」



………。



"彼氏"



これが言いたくて…

だけど言えずに煩悶していたんだろうか。


そして――。


「こここここここここ」



「ニワトリ…?「違うわ、オバサンッッッ!!!」

「お、おば…!!!?」


「よく聞きなさいッッッ!!!


玲くんはあたしの恋人なの、彼氏なの!!!

今、ラブラブ中なの!!!!

玲くんは、あたしのものなの!!!!


過去の女は引っ込んでろッッッ!!!

――おととい来やがれ!!」


そして腕を捲った右手の、中指をピンと突き立てて見せ、そしてぜえぜえと肩で呼吸を繰り返した。


………。


「言った…。

言えたぞ…。

よくがんばった、あたし…」



………。


「……師匠?」


………。


「師匠ってば!!」


………。




「玲様……顔が真っ赤……」




始まっている。

ちゃんと僕達始まっている。


そう…思って良いよね。


芹霞は妬いてくれた。

"彼女"という特別な立ち位置を、現実的に認識してくれている。



そう……だよね?

ああ、愛しくてたまらない。


どうして君はそう不意打ちでくるんだろう。

どうして……。


抱きついてきた芹霞を、ぎゅっと抱きしめた僕は…その頭上にキスを落した。


どうして、僕はこんなに芹霞が愛しいんだろう。



「ふうん…? 私、玲の付き合った女性を色々見てきたけれど…随分とレベルが下がったのね、玲…」


ひくり。

僕のコメカミが動いた。


だから僕は――


「残念だわ。貴方なら、どんな才色兼備の令嬢でも手に入るでしょうに…」



微笑んだんだ。



「僕にとっては――最高の姫です。

僕の目は、節穴ではありません」



僕の微笑みは、真実を告げる為に存在する。

芹霞に関しては。



暫く視線をぶつけ合っていたが、先に視線を外したのは美咲さんのの方だった。


「……可哀相に。

私なら…傷つかなくてもよかったものを…」


そう…唇が動いた気がした。

その意味する処が判らぬ僕は、それを聞き流してしまった。
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