シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


俺は――

石灰の壁を見据えた。


さて。

見渡す限り石灰の壁一面から…どのようにして出口を探そうか。

俺は煌と翠の後ろに立って、腕組みをしながら考える。


喫茶店『安愚楽』から、全員を乗せた床ごと…どのようにこの空間に移動してきたのか。


侵入が可能ならば、脱出は可能だ。

これは必然の道理。


見渡す限り、何もない。


しかしトリックはあるはずだ。

トリックがあるから、物理的に俺達はこの"箱"に閉じ込められている。


――坊、看破せよ。


よく緋狭さんに言われていた言葉。


看破。

見破れということ。


……。


"不可視"を装う可視が、トリック。

判らないと思うのは、見えないと錯覚しているから。

目で見えるものだけを真実だと、心が誤認してしまうから。


………。


目を…信じていいのだろうか。

俺は、急に自分の視覚に懐疑的になった。


「ちょいちょいクマ~。ひーちゃん印のこのiPhoneは万能でっせ~? こうしてネットに繋いでいる状態で此処の写メを撮ってチャチャチャ…そしてこの『解答』ボタンを押すと…ほら、見てみぃ、クマ!!!」

「おおう!!! 成程な!!」


「畜生…苛立つな、アホハット!!!」

「本当だよ。正解が判るなら教えてくれればいいのに。あ~ホントに、俺の鏡あれば、出口なんて一発でわかるのにさ!!!」

「つーか、iPhoneで解答って何だよ!!? 腹立つな~。こうなったら見返してやろうぜ、小猿。櫂。ちょっと俺達、考えてみるわ」


憤った煌と翠が案内人2人を睨み付け、作戦会議を始めたようで。


じゃれ合っている…犬と猿…にしかみえないのが、微笑ましい。


そんな2人に、愉快そうな視線を向けている情報屋とクマ。

少なくとも、クマの目には…俺達と同じ光景が映っているらしい。


聖はどうなんだろうか。

本当に"真実"を目にせず、iPhoneの情報表示のみで真実に至ったのだろうか。


何でiPhone?

煌や翠ではないが、馬鹿にされているような心地で、妙に腹立たしいけれど。


ふと…思うんだ。


緋狭さんは何故聖を案内人に選んだのか。

裏世界に詳しい…その理由で?


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