シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
僕と桜は咄嗟に結界を張り、そこに芹霞と由香ちゃんを入れた。
しかし周涅はそうした"防御"の動きはなく、それどころか嗜虐的な表情を浮かべて、蛆を足で踏み潰して悦んでいる。
「可哀相にね、君がそこの玲くんの子供を身ごもれる体をしていたら、そんな体にさせられなくてすんだのにね?」
「どういう意味……」
「玲、見ないで、私を見ない……うぐっ!!」
生きている蛆。
それが美咲さんの口から出て来るんだ。
後から、後から…。
恐怖とも同情ともまた違い、現実味がないものをただ呆然と眺めているような心地だった。
「役立たずと言われて、桜華の三善学園長に嫁がされて。彼はどうだった? ロリコンのSM好きな変態学園長は、君の体を弄んで、どこまで切り刻んで悦んでた? それとも首絞められた? 頭ガンガン打ち付けられた? 君のオチる姿見て、昇天した? 変わってるよね、そうしないとイケないなんてさ、ははははは~」
桜華の…と言ったら、あの……。
「「ガマガエル!!!?」」
僕を気持ち悪い目で見ていた男じゃないか。
「はははは。ミス桜華の玲く~ん。ミス桜華っていうのは、学園長の愛人となることで、将来を約束された…哀れな子羊のことなんだよ? あの学園長、かなりSでさ、アブノーマル大好きなんだよ。君がいてくれて、紫茉ちゃんから目をそらしてくれたから助かったよ、ははははは~」
「うわっ…。ガマガエルがロリコンでSM好きかよ…。ボク、アニオタだけどそっち系は……」
「具体的に何をするのか、あたしよく判らない…」
「は? 師匠とS.S.Aで手錠を買った「由香さん、黙ってて!」
「はははは。何だ、君にもそんな趣味あったのか~。同じ趣味なら、優しそうで綺麗な分、こっちの方がよかったね~美咲ちゃん? 怖いお兄様を持ったら妹は大変だね~。周涅ちゃんなんて優しいから、紫茉ちゃんは幸せだ~。ははははは」
蛆を吐き続ける美咲さんは、床に座り込んで泣き続ける。
"怖いお兄様を持ったら"
それをしたのは――。
「当主の…指示なのか、蛆を入れたのは!!」
美咲さんは狂ったように首を横に振りながら、また蛆を吐いた。
「何で隠すの~? 玲くんの子供を宿せないから、アレを直接開腹して入れられて…産んだんだろう? これもみ~んな、孵化した君の"子供"だろう?」
開腹!!?
孵化!!?
美咲さんの体内に入れられたのは――。
「あの…半透明の巨大な蚕の中に入っていたものか!!?」
僕の言葉に、美咲さんは悲鳴を上げて泣き続けた。
――肯定だ。