シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
パチパチパチ。
やる気ない拍手は周涅から。
馬鹿にされているのは見え見えで。
「お涙頂戴場面は泣けてくるね~。周涅ちゃんもあのネコチャンと一緒にくしゃみ止まらなくなりそう」
わざとらしい欠伸までして、退屈さをアピールする周涅には、人として何かが欠けている。
それを責める気はないけれど、腹立たしいことには違いない。
それが顔に出てしまったんだろう。
それに対して嬉しそうに笑い始めた加虐派の周涅に、ますます僕が嫌悪感に顔を歪ませた時。
「玲様!!」
桜の声と同時に、場に不穏な気配を感じたんだ。
揺れる。
紫茉ちゃんがいるとされていたあの通路の光景が揺れて…。
「「「消えた!!!?」」」
そして分岐ある洞窟の風景が現われた。
こちらが真実の姿なんだと直感的に悟る。
「あらららら~。まあいいか、周涅ちゃんはここにこうしているし。だけどこうも簡単に術が解けるのは、何だか気に食わないなあ。ああ…ネコチャンもくしゃみが止まらないみたいだし。もっと気遣ってあげるべきだよね~」
激しさを増す化けネコのくしゃみ。
「ねえ、あまりぴんときてないみたいだけどさ。そのネコチャンのくしゃみって、前もなかった?」
くすくす。
周涅は笑う。
「くしゃみ……」
僕は思い出す。
それは朱貴と修業した桜華学園内。
第二保健室に帰った芹霞と共に居たネコのくしゃみは止まらなかった。
そして朱貴が気づいたはず。
「!!?」
判らなかったのは、黄色い照明のせいか!!
僕は、慌てて化けネコの鼻の頭を指で撫で…。
「………っ」
指の腹についたのは――。
………。
ついたのは――。
………。
「師匠……だからニャンコは鼻水だらけなんだって」
「玲くん……指拭いた方がいいよ?」
「玲様……申し訳ありません。ティッシュが無くなってしまいました…」
……指についたのは、化けネコの鼻水だけで。
ぬるっとした独特の感触だけで。
「~~ッッ!!」
僕は苛立って、スカートで指をゴシゴシと拭いた。
「ははははは。ウケるな~玲くん。黄色い粉なんて、つく状況じゃなかったはずなの、忘れたの~?」
「!!!」
そうだ。あの時、芹霞は――。
「ん? どうしたの、玲くん」
芹霞は抱きしめられたはずなんだ。
「風に舞う……花粉症みたいなものだね。ネコチャン、アレルギーみたいなものかな、ははははは~」
だとしたら――。
「だけどさ~特殊なワンチャンだけが、蛆の攻撃を凌げると思ってるんだ? だったらさ、ワンチャンいないのに何でこの蛆……攻撃性がないんだろうね?」
異質な気配を感じて、僕は慌てて後ろを振り向く。
「随分と、君の無効化の力、見くびられているね」
その気配は――。
「ねえ――久涅ちゃん?」
――…久涅。
「ああ、本当に」
櫂と同じ顔をした、黒皇たる男だった。