シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


一方朱貴は皇城にも周涅にもいい感情を持っていない。

しかし、翠同様…雄黄には忠誠心がある。


普通、朱貴を手元におかないか?

位階がないなら与えればいい。

それだけの力はある。


№1が不在だというのなら、下の位を持ち上げて、空いた場所に朱貴を据えればいい。

七瀬ですら、大七位を貰っているというのなら。


「何度も言うようだけど、皇城は羅侯(ラゴウ)を敵として、手下の妖魔退治をしてきた家柄だ!! その為の位階制度で、御前……死んだ俺の父上が、より皇城の忠誠を徹底した。

大二位の偉大なる兄上が、皇城を裏切るなんてことするわけないじゃないか!!」



静まり返った中で、レイの声が響く。



「ねえサル。"あにうえ"って、どんなサル?」


………。



「サルはコザルなら、"あにうえ"はオオザル?」


愛らしい瞳を向けて、ただ純粋に翠に訊いてくる。



「俺はサルじゃないよ!! 兄上がサルなものか!! 兄上は皆から崇められる、素晴らしい存在なんだ!!」


翠が憤って飛びはねると、腰をさすって起上がろうとしていた護法童子が、震動でよろけて床に突っ伏した。

翠が床に落としてしまったことで、腰痛を患ってしまったらしい。


「じゃあお父さんがオオザル?」

「だから、サルじゃないって…」

「でもサルだから、サルが生まれたんだろう?」


「……。おい、チビリス。お前の父親は誰だ?」


煌がレイの首根を指で摘んで、目の前の高さに持ち上げて聞いた。

するとレイはきょとんとした顔をして、


「リスだよ? 当然じゃないか。僕リスだもの」


……その場に居る玲の父親は、父親ではないらしい。

玲と同じ顔をした男は、苦虫を噛み潰したような表情だ。

レイに父親と言われても、否定するだろうけれど。


「だったら、櫂の父親は?」

「僕のお父さんの弟。だから僕達、従兄弟じゃないか。お前、従兄弟の意味、知らないのか?」

「知っているよ!! じゃあ何で櫂はリスの姿じゃないんだ!! 櫂にふさふさな尻尾あるか!!?」


するとレイは――。


「あれ?」


不思議そうな顔をした。

今更。



そして、口を開けたまま呆けたように俺を見ていたが、



「姿なんて関係ないだろう? 中身は変わってないんだもの、櫂もリスには違いないよ」


………。

俺はリスらしい。

なんというポジティブな結論。


それに、レイは満足しているようだ。

まあ…好かれていると思えば、嫌な気はしないけれど。


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