シンデレラに玻璃の星冠をⅢ




「キイロとゲンロウイン、どっちが強いの?」


待てよ。

皇城は紫堂とはまた別の異能力者軍団。

元老院は懐柔できず、別集団として存在してきた。

元老院が手出し出来ない聖域こそが、皇城。


その皇城の直系が元老院の部下?


「表面上の権威は元老院が上、しかし異能力という闇の…裏の部分においては、皇城が上や。紫堂とは比較にならない大きさということは、櫂はんもご存知やろ」

「ああ。成り上がりの紫堂は歴史ある皇城の足元に及ばない。それは親父も認識しているはずだ」

「お、おま……なに我が物顔で俺の体を……」


情報屋と俺が話している間中、トコトコと煌の体を移動していたレイが、また"巣"から声を出した。


今度はうつむいて寝そべり、煌の攻撃に備える気らしい。

巣からは…"指はじき"攻撃が多いから。

判っていて巣に戻るのは、帰巣本能ゆえなんだろうか。


「ねえ、臭いおっさん。何でゴオウやめたの? 他のゴオウの人が若くていい匂いだから、嫌になっちゃったの?」

「ひーちゃんは臭くもおっさんでもないわ!! それに五皇には、白いお方が一番年寄りや!! あ、白皇はんが死んだから、ひーちゃん辞めたわけじゃあらへん!! 数日前や、数日前!!」


つまりは、黄色い蝶が履行時期を告知してから、か。


「そうか、臭いじーさんがいなくなっちゃったから、"とんずら"こいたんだね」

「レイはん!! 何を聞いて…」


「ねえ臭いおっさん」


まるで聞いちゃいない。


鳶色の瞳を持つ男は、拍子抜けしたような表情で呆けている。

息子と同じ声を持つリスをどんな思いで見ているのだろう。

成長した玲の声は知っているんだろうか。

情報にはそうしたものも含まれ、それを目にすることを、この男は望んだのだろうか。


「おっさんは、キイロを知ってるの?」

「勿論」


"おっさん"に反論する気はないらしい。


「だったら、キイロは何でゴオウを辞めたの? キイロも臭くておっさんだったの?」


「兄上を侮辱するな!! 兄上は超絶美形だぞ!! いい香りがして、こうくらくらとくるような…」

「小猿。変態発言はやめろ。ああ…遠坂が居なくてよかったよ」



「"だから"、五皇の境遇は救われたんや」


8年前の緋狭さんのように、願いの為に職を退いた、と…?


「ん~。じゃあキイロは、誰にクビにして貰ったの?」

「元老院や」

「なんで? キイロはゲンロウインより強いなら、勝手に辞めればいいじゃないか。僕だったら、辞める時にゴオウを解散させるね。"普通のリスに戻ります"って。ラストステージを盛大にするよ」


………。

レイの頭の中を覗いて見たい気がした。


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