シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「ねえ。おっさんは、ゴオウが好きだった?」
ストレートな問いに、情報屋は一瞬だけ真顔になって、
「誰が…あんなもん」
嫌悪感を示したんだ。
それは素の感情のように俺には思えた。
「おっさんも変なの。だってキイロはゲンロウインっていうのより強いんだろう? 嫌なら、キイロに言ってさっさと辞めさせて貰えばよかったじゃないか。何でゴオウにこだわるの?」
確かに――そうだ。
五皇の境遇を救ったとされる黄皇。
救済の道は、環境改善だけしかないわけではない。
五皇制度自体を廃せばよかったんだ。
「五皇を廃せない理由があるんや」
つまりそれは、五皇の盟約とやらに関係があるのだろう。
「変なの、変なの~。あ、もしかして…ゴオウって金儲けできるから?」
「別にひーちゃん金儲けは……」
「チビ。聖は…俺と初めて会った時、行き倒れてて…俺が食べていた肉まんで生き返った貧乏人だ」
大きな目を更に大きくさせて、煌の上でむくりと起上がる。
「え、サルの食べ物奪うほど貧乏なの!!? 臭くておっさんで貧乏なの!!? うわ、イイトコあるの!!?」
「……レイはん。ひーちゃんは五皇を辞めても、力が消えたわけじゃあらへん。よう喋るお口は……」
「アホハット、ストップ!! チビリス、しゃらあっぷ!!」
しかしレイが慌てて突っ伏したために、煌の指はじきは空振りに終わった。
「やったやった!! 僕は賢くて学習が出来る美リスだから、いつもやられてばかりじゃ……あうっ」
「油断大敵。第二陣に備えろ」
…やはり、煌の攻撃は凌げなかったらしい。
後ろから爆笑が聞こえるのは、クマ。
過呼吸になりそうな笑いを続けているのは、夢路だろう。
「もしかしてキイロに"じょうのうきん"してたの?」
「レイはん!! ゴオウをどんなものだと思ってるんや!!」
「ん~。でもおっさんに、"小指"はあるみたいね。よかったね、キイロが優しくて。さすがサルが褒め称えるオオザルだね」
「兄上はオオザルじゃないよ!!」
ヤクザ…と勘違いか?
可愛いからまあいい。
しかしこのままで終わらせたくない。
「情報屋。お前はが緑皇を辞めたのは数日前だと言った。それは誰の了承を得た?」
情報屋は薄く笑って、静かに答えた。
「一番新しい、青い元老院や」
俺の視線をものともせず。
だから俺は目を細めて、そのヒントを手がかりに考える。
まず思い浮かんだことは――。
「氷皇は――五皇と元老院の仲介に、いい立ち位置にいるな」
それが偶然であるはずはなく。
ならば緑皇の辞職もまた、必然。