シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「ほら~。ゴボウ、さあ鎧を「チビ。却下!!!」
そう真っ赤な顔で叫んだのは、護法童子と同じ顔を持つ翠。
「裸をワンコや紫堂櫂に見せるのは、俺が耐えられない。絶対絶対耐えられない。俺だってなけなしの矜持が…」
「小猿。これは小小々猿の話だし、別に俺達お前を取って食いはしねえぞ?」
「いや、そうことじゃない。ダメダメダメ。俺の裸は見せない。俺、デカワンコに比べて色んなトコ小さいし…更に小さいのは、恥ずかしくて見せられたもんじゃない」
護法童子を手に乗せ、一度舐めるようにして煌を眺めると、ぶるぶると頭を横に振る翠。
俺は煌と顔を見合わせて肩を竦めた。
「えっちなサルだな。イヌと僕の従弟相手に、ナニ考えているのさ。小さい小さいって…僕だって"すっぽんぽん"ですっごく小さいの晒してるのに。よいしょ」
レイはぴょんと飛びはね、再びオレンジ色の巣に帰っていった。
「俺…チビの"見た"けど、ゴボウ…同じくらいかもしれない」
ぼそりと翠が呟いた。
………。
巣に帰ったばかりのレイを、煌がまた首根摘んで高い位置に持ち上げ、皆で下からレイを覗いた。
「ちょっと!! 何で皆僕の"した"を見るの!!?」
宙に浮いた小さな足が、ばたばたしている。
「あ? いや…お前どれくらい小さいのかなって。いや、大きいのか……?」
「僕は小リスだよ? 今までずっと僕の姿見てたじゃないか。急に大きくなったり小さくなったりしないし、僕を見たかったら、そんなに持ち上げなくてもいいだろ!!?」
………。
俺が咳払いをすると、煌は複雑そうな顔でレイを頭に戻した。
「チビリス。やっぱお前黙って数を数えてろ。話が進んでいかねえ。6の指が出来たら呼べ。いいな、お前は賢いリスだから出来るよな」
「勿論!! 僕頑張るよ!! ええと…アカ、アオ…」
………。
――ゴオウって、アカ、アオ、ミドリ、シロ、クロだろ? それにキイロ混ざったら、"ろくおう"になっちゃうのかなって思ったんだ。
………。
紅皇、氷皇、緑皇、白皇、黒皇。
このうち、死んだ白皇を除く四皇が現五皇。
恐らく五皇に、まだ白皇の存在を数にいれている。
だからこそ――。
「情報屋。雄黄が黄皇であるのなら。タイミング的に、雄黄の登場を見越して引いたのは緋狭さんだ。事前打ち合わせで、聞いていたのではないか?
緋狭さんが五皇…紅皇職を降りるということを」
情報屋は、口角を吊り上げる。
「盟約は五皇間の取り決めとはいえ、履行させる為には定義(ルール)がありますんや。櫂はん達がしてきたゲームのように、状況に応じて変化する定義(ルール)や。
盟約の履行期においては、どんな五皇の仕事も放棄し、盟約の履行だけに心を向けねばならんのや。
盟約を履行させるために、適用される定義(ルール)のひとつは、『盟約の履行期には五皇は5人いなければいけない』」