シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


どうしても増員するのなら、どうしても減員しないといけない。

黄皇の登場を知り、紅皇は役を降りて"五皇"とした。


即ち、五皇とみなされたのは――

黄皇、氷皇、緑皇、白皇、黒皇。


しかし緑皇は氷皇判断の元、離職。


数が足りないのはどうしてだ?

死んだ白皇を数にいれてもまだ足りない。


第一、五皇を離職したはずの黄皇は、いつ復職したんだ?

誰の基準で、五皇とみなされる?


氷皇か?

黄色い蝶の出現を見越せなかった彼基準か?


しっくりこない。


………。


もしも――。

五皇の真の罷免は、元老院という権威によってもたらされる表面上の肩書きではなく、個々の"命"…だったらどうだ?

つまり、命を縛るのが……"黄の印"だとしたら。

その印をもつ者こそが、真の五皇。

元老院の任命権は関係ないのだとしたら。


黄の印により緋狭さんは倒れている。


今、確実に生きているのは、

氷皇、黒皇、緑皇…そして黄皇。


『盟約の履行期には五皇は5人いなければいけない』


何故、緋狭さんは倒れる必要があった?


「ひとり、足りない…」

思わずぼやくと、情報屋は笑った。


「逆や、櫂はん。多いんや」


「え?」


「見方が違うんや。五皇は巡る。途切れることはない。それが必然で動く理由」


俺は目を細めた。


数が多い?

見方が違う?


「黄の印を継承させていく為に」

「……!!!」


ああ、もしかして――。




「代替わりか」


「然り」



情報屋は頷いた。




「櫂、つまりどういうことだ?」


「五皇が離職するということは、次代五皇にそれを引き継がねばならない。多分、それで初めて黄の印が受け継がれる。その方法は儀式のようなものか何なのかまでは判らないが。世俗的には離職と認められても、黄の印的に言えばまだ効力は失っていない。つまり、まだ五皇だ」


情報屋の否定しないところを、肯定と捉えるならば。

この男はまだ次代に引き継いでいない。


「は!? 世代交代!!? 五皇からバッジとマント貰っておしまいじゃねえのか!!?」

「ワンワンはん。そんな簡単な話やない」


すっと……情報屋から、軽々しい表情は消え、酷薄めいたものが現われる。

その瞬時の切り換えに、判っているはずだというのに、俺は思わず息を飲んだ。


「現五皇全員がその後継を認め、該当五皇が黄の印移譲の儀式をした後、後継は試練に遭う」


それは氷皇にも通じる表情。

放たれる言葉は標準語。


放たれるのは…五皇としての威圧。

元だとは到底思えない、現役の強さ。
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