シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「変わり映えしないな。俺、耳はいいはずだし…ワンコもいいんだろ? 俺達、超音波聞き取れる程なんだし」
「うーん。ここまで軽い音だと…なんか変だな。横壁じゃなく…天井とか? 一番疑わしきは…喫茶店の床板がある場所の真上!!! どうだ!!?」
コンコン、コンコン…。
コンコン、コンコン…。
「うーん、駄目だな。偃月刀伸ばして天井叩いてみてもやっぱ同じ。これ…コンクリに見えてコンクリじゃねえのかな。だったら…ぶち抜けるか?」
いつ出来るようになったのか、巨大な形に変化させた偃月刀を両手に携え、ぶんぶんと振り回すようにして、至る所の壁に斬り付けるが、
「何でこんなに手応えないよ? 空気斬ってるみてえだ。石や金属でもスパスパ斬れる偃月刀が、こんな壁を斬れないって何事よ!!?」
「ワンコ、術ならイケるかも!!!」
「おおナイスだ。じゃあ…金翅鳥(ガルーダ)だけは敬遠して、炎の…ああ!!? 駄目だ。壁に吸い込まれる!!! 小猿!! お前は…」
「水の符呪!!! 炎の符呪!!! 駄目だ。ちろっ…とか、ぽっ…とかしか出てこない」
「だったら小々猿は!!? 回復してんだろ?」
「そうだな、じゃあ…」
「待て」
俺は手で制する。
「こんな序盤で、式神は使うな。あれは翠の切り札だろう? 次に緊急事態に陥った時、すぐ出せれるのか?」
この先何があるか判らないのだから。
「う…。でも…そうしたら…」
「多分、この分だと…俺の風でも闇の力でも無理なんだろう。煌の増幅力をもってしても、多分無理だ」
「はあああ!!? 櫂の力でも無理って何よ!!? 何でそう思うよ!!?」
「未知数のお前達が弾かれているということと…音だ」
「「音?」」
俺は頷いた。
――坊。行き詰まったら、まず矛盾を引き出せ。
――小さなひっかかりを、拡げよ。
いつだったか…緋狭さんにそう言われたことがある。
そう、音。
コンクリートなのに軽すぎる音。
それがひっかかるんだ。