シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「試練とは?」
「死んだ方がましだと思う…地獄に落とされる」
俺は目を細めた。
「それでも生きていた時、背中に……黄の印が現われる。現われたら、五皇の誕生だ」
もしかして緋狭さんは――。
「ひとつ聞く。黄の印移譲の儀式とは――
仲間の五皇に…黄の印を傷つけさせることか?」
情報屋は笑う。
「是」
肯定だ。
緋狭さんの背中には電子盤模様。
それが電脳世界と何か繋がるものがあるのだとすれば。
俺は…玲の父親を見る。
「此の世界は……黄皇に縁(ゆかり)がある。そこに五皇と電脳世界が関係しているのだとすれば。
五皇継承の儀式で生き抜きながらも死にかけた五皇候補は、異世界の…電脳世界の力を借りて治療され、その命は…黄の印という力を持つ黄皇によって繋ぎ止められた」
情報屋は歪んだ笑いを寄越す。
「櫂、何で…電脳世界なわけ? 0と1だろ?」
「異世界の力は、表世界の予想を遙かに超えた力を持つのだろう。玲が回復結界に優れているのは、本人の素質…というより、0と1の恩恵を被っているからなんだと思う。
人間には微弱電流が流れている。だから0と1の影響で、僅かにでも組織が変異するのだろう。それでなくとも、遺伝子変異を電脳世界に求めた男が存在するのなら、0と1の力は…常識外な未知数を持っていると考えた方がいい」
「はあ……って待てよ、仲間の五皇に背中の印を傷つけさせるのが、代替わりの儀式だというのなら、緋狭姉…お前に傷つけさせたじゃねえか!! 緋狭姉…マジに紅皇降りる気なのか!?」
「儀式を行ってから、後継が黄の印を受け継ぐまでにタイムラグがある。移行している今は……双方に、黄の印がある状況だ。
つまり、今…黄の印の保持者は、氷皇、黒皇、紅皇、俺…そして」
「ねえ、"ろくおう"…最後のキイロが出来たよ!!」
両指で6の数を作ったレイが、煌の肩に乗って見せてくる。
「おう、やったな。キイロ……黄皇もか?」
「えへへへへ!! サルサル!! 見て、ろく~!!」
しかし情報屋は煌の言葉に否定する。
「黄皇に黄の印はない」
だとすれば――?