シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「どちらにしても、緋狭姉が安全にいられる手立てはねえってことかよ!!」
煌の荒げた声を耳にしながら、俺は目頭を指で押さえて言った。
「黄の印を施した、雄黄が死ねばどうなる?」
「紫堂櫂!!!?」
俺は騒ぐ翠を片手で制した。
「可能性の話だ。黙っててくれ」
「う……」
「あのねあのね、アカ、アオ…」
「おお、さすがはレイ殿!!」
「チビリス、小小々猿!! お前達も黙ってろ」
静まり返った中、緑皇は答える。
「元々雄黄は黄の印の効力を強めるために、智慧の白皇の力を借りた」
俺は訝しげに緑皇を見る。
「魔方陣だ」
俺は、"約束の地(カナン)"の魔方陣を思い出す。
そして――。
「それは東京にもあるな? 東京に現れたという、黒い塔の近くに」
緑皇は頷く。
魔方陣は、やはり存在する。
「あれを同時破壊しない限り、黄の印の効力は消えぬ」
思い出す。
玲と煌の力を借りて、10個の魔方陣を同時破壊した…あの爽快だった時のことを。
「しかしあれは!! 死者に有効な魔方陣だったはず!!」
死者を生かせる為のもの。
俺の言葉に、嘲るように緑皇は笑った。
「そう。だからこそ、破壊が必要だ」
!!!!!
まさか!!!
顔色を変えた俺に、煌が声をかける。
「おい、櫂。どういうことだ!!?」
「恐らく雄黄は――」
俺は翠を見て、そしてその頭に手を置いて言う。
「死んでいるんだ」
「「はあ!!!?」」
煌と翠が、同時に声を上げた。
「魔方陣のおかげで、生きた…屍」
ああ、ここでもまた"生ける屍"。
しかし、雄黄が先に手を打っていたというならば。
「けどよ、櫂。黒い塔はつい最近出来たものなんだぜ? あれも出現は不思議だけど、近くに魔方陣があるというのなら…雄黄が死んですぐ作れて、効力が持てるものか!!? いやそれより…ご意見番の白皇は死んじまってるじゃねえか!!」
雄黄はあらかじめ――、
「煌、雄黄が死んだのは、つい最近ではない」
自らの死を予期していたことになる。
つまり、魔方陣の効力に今後を託すほど――、
「少なくとも、白皇が存命で魔方陣が準備できる"数年前"には死んでいるはずだ」
死んだ後のことを、危惧していたことになる。