シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「お前達が叩いていた音は…重いコンクリの音ではなく、鉄筋構造特有の音がした。だけど…電波が弱いとされるiPhoneでは、その鉄筋構造でも難なくメールやネットが出来るし、俺が画面を見た時、電波もMAXだった。
それが…妙にしっくりいかない」
視覚と聴覚が…調和していない。
「は? あいつが持ってるのは本物のiPhoneとは限らねえぞ?」
「ああ。だけどそれなら…情報屋のことだ。名称を変えて得意げになりそうな気がする」
例えば…HiPhoneとか。
「「ん……」」
確かに、俺の言葉は決め手にはならない。
だけどそれが、俺の"小さなひっかかり"。
考えろ。
………。
五皇が勅命した案内人の動きも必然と考えるのなら、情報屋の行動に何らかのヒントが提示されているはずで。
それが"iPhone"であるというのなら。
あの機械こそを"真"とするのなら。
相反した結果を出す、俺達の感覚は"偽"。
目や耳もアテにしてはならないということだ。
究極論的には――
自分よりも、情報屋を信じられるかということ。
――坊、迷った時には…。
俺は信じられるか?
この…人を食ったかのような、情報屋を。
――己の"心"を信じよ。心は嘘をつかぬ。
………。
――坊、私が"約束"で縛る限り、聖は裏切らぬ。
「音のことは考えるのはよそう。音は…頼りない視覚を補佐するものでしかない」
此処はコンクリの部屋でもなく、鉄筋構造でもない。
俺の直感は、心はそう告げた。
「「え~、俺達頑張って考えたのに~」」
俺は笑う。
「だからこその結論じゃないか。矛盾点が浮かび上がった」
そして俺は聖を見る。
………。
俺のコメカミが、ぴくりと動く。
つられて情報屋を見た煌が騒ぎ出した。
「お前!!! その"あははははは~"の青を表にすんなよ!!! 櫂の目が怖くなったじゃないか!!! 俺のにしろ、俺のに!!!」
「ワンコ…とうとう認めた。自分だって…・」
そんな翠の声は煌には届いていなかったようで。
何て腹立たしい…意味ありげな行動。
"iPhone"に次ぐ、何かの示唆だとするのなら。
"リバーシブル"
それが意味するのは?