シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「は!!? 何で電脳世界が攻撃してくるんだよ!!!」


鳴り響く、警報機。

『戦闘準備』とのアナウンスも聞こえる。


慌ただしく動く足音。


途端緑皇が、深い緑色の光に覆われば、その重圧な力の放出に、鼓膜の奥がずんとした震動を感じた。


「ここで、仮想とはいえ"生育"していたのがバレたからだ。裏と電脳……持ちつ持たれつの関係が、第三者の手で著しく崩れた時、歪みが出来……その隙を狙って奪いにくる」


「なにを育てていた?」

「"子供"」



緑皇が顎で促すと同時に、景色が揺らいだ気がした。


「え!!?」

「部屋が!!?」


いつのまにか、部屋の景色が変わっていた。

それまでぼんやりとした白基調の部屋だったのが、明確な輪郭を持っていく。

今までのものも真実を隠す擬態(カモフラージュ)だったのだろうか。

裏世界特有の特殊さは何もない。

あるのは表世界と何ひとつ変わらない、大きな機械と――


「手術台か? 3つもあるぜ?」

「ワンコ!! こっちにはビーカーとか試験管とか、変な液体入っているのがずらっと。うわ、ホルマリンもある!!」


機械とは無関係に思える、実験器具が置かれていた。



此処は――

機械を埋め込んで"延命"させた手術室なのか?


奥の方で機械を操作している、クマと玲の父親。


「玲央、どうだ!!!?」

「ああ、"あの子達"は緊急隔離した。だけど…来る!!」



そんな意味不明な会話が途切れたと思った途端、

建物が大きく揺れて――



「ぐはっ…」



緑皇が口から血を吐いたんだ。



「大丈夫か!!!?」

「触るなと…ぐっ…」



やばい。

よく判らないけれど、やばい状況ではないか。


瘴気を感じるんだ。

次々と瘴気が増えて、窒息感がする。


何だこの瘴気の量!!!


グラリ。


再度の大きな震動が起きたあと、壁が…半透明になったんだ。


「防御機能、停止!! 虚数で攻め込んできた!!」


クマの掠れた声が聞こえた。 


「このままだと、この建物は……0と1の結界が破れ、ただの硝子だ!!」


魔法のような電気の恩恵が、ここから無くなれば……残るのは、見た目通りの脆く儚い硝子の塔。

壊されるのは、時間の問題だ。


しかし敵は何処から攻撃をしているんだ?


「櫂……あれ何だよ…」


揺れる建物の中、煌が指さしたのは……半透明な壁から見えるこの建物の外。


「!!!!?」


そこには大きな白いスクリーンが螺旋状に出現していて。


俺は――

"約束の地(カナン)"を思い出した。



「何で皆あのスクリーンを切ってるんだ? あ? また増えたぞ」

「ワンコ、あれあれ!! スクリーンが…ボコッって今、膨らんだぞ!!!?」


やはり此処でもそうなのか。


増え続けるスクリーン。

その向こう側にいる"なにか"


Zodiacか?

別のものか?


"約束の地(カナン)"では、久遠の言霊が功を奏した。

その久遠は今――。
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