シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「俺が……俺達が見こんできた男なら、出来るはずだ。
それだけの苦境を、お前も、お前達もやり抜けてきた」
ありえないほどの優しい笑みを向けて来て。
それはおちゃらけた情報屋のものではなく、初めて見た…聖という男の素の笑みのように思え、それが……聖の覚悟を思わせた。
一抹の…不安を掻き立てる。
「翠、櫂に従え。
そして、皇城を救済しろ」
それは翠も感じ取ったのだろう。
「ど、どうしてそんなこと言うの? 何だか……」
聖の言葉は、何処までも重く感じ取れるから。
「お前の兄上は――
本当に……素晴らしかった。
お前の信じる兄上を……
悲しませる生き方をするな。
自分を恥じるな。自分に……自信を……」
そう言うと、緑皇は――。
「ちょっ…アホハット!!!?」
夢路にもたれ掛るようにして、崩れたんだ。
「大丈夫、妾がおる。
決して死なせぬ!!」
「頼みます、夢路さん」
俺は夢路に一礼し、そして…風の力を塔の壁に向けると、か細い悲鳴のような音をたてて、硝子の壁が砕け散った。
「ここから飛び降りる!!」
風に髪を揺らしながら俺が叫ぶと、翠が悲痛な声を出した。
「ここ、高い建物の天辺だよ!!?」
青ざめた翠に、煌が快活に笑ってその肩を叩く。
「大丈夫、櫂は風使いだ。チビリス、ゴボウ……」
「了解!!!」
「行きますぞ!!」
「逃げる気ねぇみたいだな。まあ…いざとなりゃ、俺が……イテテテテ!! 髪毟るな、怖いのか!!? ハゲる、ハゲる~!!!」
俺は笑いながら、両手に煌と翠の腕を取り――
「では、行くッッッ!!!」
建物の外に身を投げた。