シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「そうだよ、葉山ちゃん、正解~。シルクハットの聖ちゃんは周涅ちゃんと久遠くんのお友達。色んな情報を提供してくれてたんだ。無論、有料で…だけどね。結構がめついんだよ、沢山ふんだくるくせに貧乏で。何に使っているんだろう。判る、ネコちゃん? ははは、また噛むの? 今度はかなり深くきたね。ネコだからってあんまり調子に乗りすぎると、周涅ちゃん…ぷちっと潰しちゃうよ?」
剣呑な響きが聞こえて、慌てた芹霞さんと遠坂由香が化けネコをなだめる。
「あの情報屋は、周涅とも…皇城とも繋がっていたのか」
唸るように言った玲様の声に、周涅が笑って答える。
「そりゃそうだろう。慕うべき存在が皇城に居るんだから」
「慕うべき存在って?」
芹霞さんの問いに、周涅は笑う。
「黄の印で五皇を縛っている人さ」
「「黄皇!!!?」」
私と玲様が思わず同時に声を上げた。
皇城の者が五皇のひとり!!?
「それは…誰だ!!」
「玲くんと紫茉ちゃんとの間に子供を作ることを望んでいる人さ」
「「皇城雄黄!!!?」」
またもや私と玲様の声が重なった。
「だから君の子供を望むのは、皇城の意思であり五皇の意思であり。誰にも逃れられないんだよ?」
残虐に…しかし僅かなりとも"揺れ"を感じたのは気のせいか。
「黄皇は…死んだはずじゃないのか!!? だから今の五皇が…」
「生きているよ、ちゃんと。ぴんぴんしてたろう?」
周涅はどこまでも含んだ笑いを見せる。
それは驚く私達を見ての愉悦というよりは、自棄のような嘲笑にも見える、複雑なもので。
「その雄黄を、何であの情報屋が慕う? 情報屋は、皇城出身なのか?」
玲様が怪訝な顔を向けながら、話を戻す。
「違うよ。五皇の代替わりには、試練としての"魔穴(マケツ)"という場所が必要なんだけど、それが皇城の奥の院にあるんだ。忘れようとしても忘れられない記憶と、切ろうとしても切れない"絆"があるなら、嫌でも縁は強くなるんじゃない?」
「五皇……?」
私達は思わず黙したままでいる久涅を見た。
「そう。久涅ちゃんも、聖ちゃんも五皇」
「「「えええええ!!?」」」
此の場で驚いていないのは、周涅と久涅とネコだけだった。