シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

「緑皇は変わり身が早いからね。さすがは"変化"の緑皇だよね。最初は凄い目をして反抗心丸出しだったのにさ、急にフレンドリーになって、あっさりと皇城の陰陽道の術も盗んで、スタコラサッサ~。あ、これ死語かな?」


それに答える者はなく。


あのチャラチャラしている男が、緑皇?

仲間だから緋狭様は、彼を裏世界への案内役とさせる為に、自らの背中を突き刺せた?


あの…似非関西弁もどきを使う男。

確かに標準語に戻る際は、異様な威圧感はあった。



――どんなに堕落しようとも、生きる為には…使えるもんは使わんといかん…そんな人間もおりますんや。


木場の地下で、七瀬紫茉を助ける為に、大勢の人間に輪姦された朱貴を見て…確かそう言っていたはずだ。


それは朱貴のことだと思ったけれど、自らの境遇も兼ねて言っていたのか?


その為の、変わり身の早さ?


櫂様は、煌は知っているのだろうか。

案内役が、五皇のひとりだということに。



「魔穴っていうのは、皇城でいえば…羅侯(ラゴウ)という悪い神様に使える妖魔の巣窟。光が一切射さない場所でさ、瘴気の掃き溜めみたいな処なんだけど。ああ、"地獄"とも言われているんだよ。

そこに普通人が堕ちるとさ、妖魔が群がって襲ってきて、その牙や
爪で皮膚を剥がされ、穴という穴は広げられ、骨は砕かれ、内蔵の欠片もないくらいに引きちぎられて食われる。残るものは、血痕だけかな。

飢えたハイエナが群がる方がまだマシだろうね。その怖さは体験した者にしか判らない。だよね、久涅ちゃん。どうだった?」


久涅の顔が、無表情のまま引きつり始めた。


「五皇後継の試練で、魔穴に堕とされた感想教えてよ?」



微かに見えるは…"恐怖"?

この男が?

というか、なんで生きている?


「もしも五皇としての適格者であれば、直前の前代の儀式によって植え付けられた黄の印が、体を再生させるんだったよね。妖魔に襲われた体が、一度細胞レベルにまで完全に分解され、それで復活出来たのってどんな感じ? 分解された遺伝子に"異次元の力"、更には悪影響となる力を無効にする力が目覚めたおかげで、君は今のその姿を手に入れられたんだよね。全ては結果オーライってとこ?」


「今のその姿って…櫂の容貌か!!?」

「元々の俺のものだ!!」


久涅はあくまで、正当性を主張する。


「保存されていた櫂ちゃんの遺伝子が、"異次元の力"の回復力と君に眠る無効の力の開花のおかげもあって、遺伝子変化をおこしたんだっけ? まあ、櫂ちゃんは君の"器"になる予定で生まれたみたいだし? そう考えれば、久涅ちゃんの言い分も判るけどさ」


一体なにを話しているんだ?

櫂様が誰の器だって?
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