シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

知恵 煌Side

 煌Side
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肌で感じるのは、瘴気。

それは人型の"悪意"を根幹に作られたものとは類が違い、人非ざる者の不可解さによる不快感から成り立つようなものに近い。


今まで俺達が瘴気と呼んできたものとは異質だけど、瘴気以外にそれに近い感覚を表現できねえから、瘴気と呼ぶしかねえ…そんな感じだ。


「なんだこりゃ?」


一面、まるで大きな白いシーツを干しているかのように、巨大な白いスクリーンがまるで壁のように、そして無造作に横並んだ風景。

それだけ見てれば長閑にも思えるけれど、硝子の塔に入る直前の光景は、俺達のよく知る表世界を進化させたような…そんなもので、こんなだだっ広い荒野とスクリーン……そしてぽつんとある硝子の塔の3点セットのものではなかったはずだ。


俺達が塔の中に居る間、他のオプション一体何処いったよ?

どんな裏方黒子がさささっと片付けたよ?

何百枚、スクリーン設置したよ?

何処からそんなもの運んできたよ?


それだけなら、此処はなんでもありの世界だから、またおかしな場面が切り替わったくらいにしか思わなかっただろうが、今は状況が違った。


白いスクリーンに飛び散る血飛沫。



それは、先に降り立っていた忍者のものに他ならず。

敵が見えねえのに、黒装束の忍者だけが血に染まってバタバタ倒れていくんだ。


鮮烈な真紅色に染まる視界。

悲痛な叫び。

嗅ぎ慣れた鉄の臭い。

肌で感じる瘴気。


5感のうち、4つ揃ってりゃ…現実感十分だろ。

非現実的な光景の中、忍者の死に行く様だけがやけに生々しくて、それに体と心がついていけねえ俺は、拒否反応のように全身じっとりと汗をかいちまった。

頬に纏わり付く髪だって、汗に濡れて気持ち悪い。


敵は――何処だよ?


不可視な敵は居るんだ。

だから忍者が倒れている。


しかも不可解なことはそれだけじゃねえ。

忍者の逃げ道を遮るように、白いスクリーンが増殖している。

見間違いじゃねえんだ。

上から見ていた時よりもその数は遙かに多く、見ている間にもその数は確かに増え、さらには並んでいる形状が少しずつ迷路じみてきている。


まるで俺達が降り立った…硝子の塔を中心に、スクリーンの壁が波紋状に拡がっているようなそんな迷路。


分裂? 移動?

スクリーンが?

生きてるのか、このスクリーン…?


「わけわかんねえ……」


頭抱えながらも、忍者達を助けようと俺達は近寄った。


丁度目の前で、スクリーンを刃物で斬り付けた忍者が倒れる。

血を吹き出しながら。


俺は既に息絶えていた忍者を抱き留めながら、致命傷に至った傷口を見た。

それは切り傷ではなく――


「焦げた……跡?」


まるで火傷が裂けて血が噴き出たような…そんな傷で。


意外過ぎる傷の種類に、さらにきょとんとしてしまった俺だが、やはりこんな傷を負わす"なにか"はいるらしい。

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