シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「なあなあ、この穴…見てみろよ!!!
あの赤いの…溶岩じゃないか!!?」
翠の声に、煌も慌てたように屈んで穴を覗き込んだ。
「本当だ!!! 櫂、真下は溶岩だ!!! この部屋、ひっくり返って溶岩の真上に止ってるのか!!? ああもう何だかわけわかんねえや!!! なあ俺達、どう抜け出すよ!!? 結局、出口塞がれてるじゃねえか!!!」
………。
溶岩ね…溶岩。
下から出てはいけない…"先入観"でも持たせる気か。
何処までも、俺の"心"が出した結論を試したいか。
面白い。
「櫂、どうするよ!!?」
「コンクリと思った音はまるで違う素材の音。
壁だと思って斬り付けたものは"無"の…空気を斬っているような感触。術も吸い込まれる。
だとしたら――
視覚に惑わされている他感覚を、まず元に戻していこう」
「あ?」
「要は…脳を"騙されている"と納得させればいい。
目に見えているものは間違いだという証拠を突きつければ、視覚的に脱出不可能な事態は、打開出来るはずだ」
俺は笑う。
「翠」
「何?」
「床を通り抜けてみろ」
「へ!!?」
翠は驚いて飛び跳ねた。
「忘れていないだろうな、神崎家で自慢したのはお前だぞ?」
「小猿が家で…? ああ、あの役立たずな超能力か!!? 俺忘れてた!!!」
「や、役立たず…」
「かどうかは、判らないぞ、煌。
さあ…やってみろ」
「は!!? 成功しても…溶岩に落ちるじゃないか!!!」
キーキーキーキー声がする。
「だったら踏ん張って浮け。お前は浮くことも出来るだろう?
足りない部分は俺達が引っ張ってやるから。
何も心配することない」
俺は笑って、青ざめる翠を促した。
「さあ……」